【週刊粧業2017年1月16日号12面にて掲載】
化粧品会社の販売促進支援をしてきて今年で35年目になる。店頭販売、訪問販売、ネットワーク販売、サロン販売等様々な業態のお手伝いをしてきた。
最近20年ほどは通販化粧品のお手伝いが多くなっている。化粧品ビジネスも様々に変化してきているが、通販化粧品の分野は特にこの20年間に大きく様変わりしてきた。マス媒体が大きく牽引した時期もあり、ニッチ市場を狙ったコンセプトが大きく花開いたことや、女性たちが忙しくなるにつれ「時短」や「オールインワン」等の商品も生まれた。そしてありとあらゆる他業種からの新規参入が相次ぎ、ここにきてやっとひと段落という状況だと思う。
そして今、通販化粧品ビジネスは大きく転換する時期を迎えているように思う。これまで通販企業は店頭販売に対するアンチテーゼからスタートしたコンセプトが多かった。たとえば店頭販売の大手化粧品メーカーが提唱してきた「お手入れ3ステップ」に対するアンチテーゼとして「これ1つでOK!」のオールインワン訴求、1つで何役もの機能があることで「お手軽」「時短」「コストパフォーマンス」を訴えてきた。
しかしここにきてそのアンチテーゼ訴求もなかなか効かなくなってきている。「時短」「お手軽」は美容に投資しない女性たちを多く輩出し、結局化粧品マーケットそのものを狭め、消費支出の中の化粧品シェアを下げている。
つまり通販化粧品もその場限りの『戦術』だけでは乗り切れなくなって、本来の目的である「本当にきれいになれる」商品とお手入れ方法が、問われ始めているのだと思う。しかもお客様1人ひとりに応じた「他人がきれいになるのではなく、私の肌や好みに合ったきれいになるための方法とは?」や「春夏秋冬に応じた、お手入れ方法とは?」が問われている。そのようなお客様のために1人ひとりの個性に合ったアドバイスやお手入れ方法を提案できるコンサルティング機能が求められているのではないだろうか。しかも通販ビジネスで。
ビジネスとして初期の「空白市場」に売り込む段階では、個性的でインパクトのあるキャッチフレーズや、他社からブランドスイッチさせられるような面白い商品が求められる。
しかし今日のように「通販化粧品を使用したことがないお客様がほとんどいないという成熟市場」になってくると、1人ひとりのお客様をきれいにする方法が求められ、顧客育成ストーリーが不可欠になり、そのお客様をきれいにするプログラムが必要になる。商品開発もお客様の要望をじっくり聞き出し、分析してお客様タイプ別の商品が必要になる。加えて顧客が他社商品とどのように合わせ使いをしているかなど、お客様情報を丹念に集めないと適切なアドバイスは難しくなる。
さまざまな通販化粧品会社をお手伝いしてきて思うことは、同じようなビジネス形態をとっているにも関わらず、全く別業種のようにビジネスセオリーが異なっているということである。提供している商品の機能やコンセプト、ターゲットとしてのお客様層や、新規獲得手法、リピート育成販促が各社まちまちで、業種としてお手本になるような一定の戦略と戦術が確立しているわけではない。しかも本来緻密であるべきデータも、お客様の気持ち等の分析についてはやや心もとない。
そんな中で成熟したマーケットをさらに大きくするためには、「お客様をきれいにすることに照準を合わせ」「お客様の声に耳を傾けて、寄り添いながら」顧客育成をしていく以外にないと思う。それを続けることで、より大きく洗練されたビジネス形態になるのではないかと思う。長年このビジネスでお手伝いをさせていただいたサポート企業として、さらに業界全体が成長するような提案を今年も続けたいと思う。