第32回 美容時間は短い方がいいか?『時短美容』に思う

【週刊粧業2017年6月5日号4面にて掲載】

 スキンケアからメイクまで『時短もの』が流行っている。とにかく今の女性たちは「忙しい」。『時短』は仕事だけではなく、家事から、食事から、日常生活の全てにおいてブームになっているようだ。もっともこれは今に始まったことではなく、私を含む中高年世代も、一日中家事に忙殺されていた親の世代に比較したら、なんと『時短』の恩恵を受けていることか。

 そして徹底的に『時短』に絞った家事や美容に代わって、逆に時間が増えているのは情報への接触時間や趣味時間。関心があることや好きなことには手を抜かず、育児中であろうが、仕事を持っていようが、好きなコトにはこだわるのが今日の女性たち。ならば美容&化粧時間も「好きな時間」になればよい。お手入れタイムを楽しんでもらう工夫がもっとできないか?と考えてみた。

 まずは時短メイクやお手軽スキンケアを提案することも大切だが、お手入れやメイクを楽しくさせて時間を短く感じさせることができないか?ということだ。たとえばパック時間の3~5分。終了時間を知らせるために、色が変化したり、終了時間を目安に歌い終わる歌があったりしたら、待つ時間が楽しくなり「無駄な時間」という認識が減り、時短を意識しなくなるのではないか?『時短』ではなく、『時楽(時を楽しむ)』に変えるのはどうだろう。

 次にお手入れしている間に、温度やテクスチャーが変化するというのはどうだろう。今でも温度が変化するクレンジングが人気だが、もっとお手入れを楽しめるように大きく変化する形状や処方があっても良い。

 とにかく女性たちに「美容時間」を楽しんでもらいたいと思う。確かに現代人は忙しいので、『時短』を提案すれば受け入れてもらえるのは良く理解できる。しかし一日の美容時間をきちんと確保して、自分の手でお肌を触ってもらって、お手入れをすることが「煩わしい」と感じられてしまったら、化粧や美容そのものが「楽しみ」「好きなコト」ではなく、家事と同じように「役目」「やらなければならないコト」「やらされ感の作業」になってしまう。それでは、美容&化粧品業界の将来は暗いのではないか?

 つまり「なるべく短時間で済ませたい嫌なコト」になってしまっては、将来が危ぶまれるので、美容や化粧にもっと楽しみを取り入れ、「エンターテイメント」的要素を強めなければならないのではないかと思う。それには提供する我々がもっとアイデアを絞り出すべきだと思う。たとえば昔ラジオ体操が全国に流れ、子供たちだけではなく大人まで参加してカラダを動かすことが全国に定着し、人々の健康に役立ったように。現在ならスマホからお手入れの手順と音楽が流れてきて、朝や夜のお手入れタイム、集中美容のスペシャルタイムなどを彩れば、少し楽しみが増えるのではないか?

 化粧品はお手入れも含めて成立する製品なので、人々が気持ちよく使ってくれる仕掛けをつくるのは我々業界人の使命だと思う。そのために長い間、使用感や香りやテクスチャーにこだわって商品開発をしてきたはずだ。ならばそれをもっと推し進めて、お手入れそのモノ(コト)を商品化する工夫があっても良いと思う。

 『時短美容』に迎合するだけでなく、「楽しいお手入れ時間」を提案する夢のような「美容&化粧とその環境提案」があっても良いのではないだろうか?
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鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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