【週刊粧業2017年10月16日号6面にて掲載】
日本は世界で一番早く超高齢化を迎えるらしい。2015年時点でほぼ2人に1人が50歳以上になり、2030年ではさらに比率が高くなる。
化粧人口(15歳から79歳までの女性人口)が減り続ける中、50歳以上の割合はますます拡大するばかりだ。そのためアンチエイジング化粧品市場は伸びており、2015年度のスキンケア市場構成比の約30%がアンチエイジング化粧品とのことで、今後もさらなる市場の拡大が予測される。
弊社は様々な化粧品会社の「お客様グループインタビュー」を実施させていただいているが、最近は50歳以上の中高年、あるいは60歳以上のアクティブシニアと呼ばれるお客様をインタビューさせていただく機会が多い。そんなお客様の声を聞くと、多くのお客様が「老化に抵抗し、いかに若々しさを維持するか」を強く望んでいることがよく分かる。
まずは、中高年の3大肌悩み「シミ」「シワ」「たるみ」の解決にピンポイントで訴求する商品への期待が高い。「シワを目立たなくしたい」「シミを薄くしたい、できればなくしたい」「たるんだ顔を毎日見ているとがっくりする」などの発言の裏には、「とにかく老けた顔になりたくない」という強い気持ちが込められている。
またその他の悩みでは、「どうしても口の周りが乾燥する」「目の下のたるみはどうしたらいいのか」「この法令線が本当に嫌だ」「眉間のシワを何とかしたい」と顔の各部位ごとに明確な悩みを訴える。
彼女たちの中にはレーザー治療を経験している人もいれば、美容にいいと聞けばすぐに新しい化粧品を試す人、美容のためにたくさんの健康食品を摂る人など、様々にチャレンジしている人が多い。しかもこれまで美容関係の仕事をしてきたとか、美容の知識が豊富だというお客様ばかりではない。ずっと専業主婦で子育てをしてきて、いま50代、60代を迎えたというような人々までが、多くの肌悩みを訴えアンチエイジング化粧品に熱い視線を送っている。
一方、化粧品メーカー各社もアンチエイジング化粧品の開発にはかなり力を入れているようだ。化粧品開発の技術進化もあり、シニアの3大肌悩みに対応できる化粧品が増えた。最近ではシワの改善を訴求するクリームや、シミの改善に期待できるという商品もヒットしている。
ターゲットとなるお客様たちもそんな企業の情報に敏感で、化粧品の成分や構造にも興味を持っている。しっかりした科学的理論に基づいた商品やお手入れ方法を実践し、必要とあればネット検索で調べている。
そんな肌悩みが深刻な50代、60代の中高年世代だが、メーカー情報を無条件で信じてくれる訳ではない。また肌悩みがあるからと言って課題解決を実感しない商品を使い続けてくれる訳でもない。使用感やテクスチャー、生活スタイルに合う使い方ができるか、または購入方法や細々としたサービスの隅々までチェックし、少しでも気に入らないとすぐに止めてしまう。化粧品は本当に『総合芸術品』のように作り、売らなければならないと思う。
そこでいつも私が気になるのは、化粧品メーカーの商品開発や広告企画の現場に50代、60代のスタッフがほとんどいないということだ。そのような体制ではこの世代の生活の中で役立つ、本当に心に響く化粧品はできないのではないか?使う人がアクティブシニアならば、開発する人も企画する人もアクティブシニアが参加しても良いのではないか?ということである。
自分もこの世代になり、周りの同世代の友人たちを見てもまだまだ気持ちは若々しいし、みんな「今だからこそ充実したビジネスが可能だ」とも思っている。だから、ぜひアクティブシニア世代をターゲットにするだけでなく、『ビジネス』でも活躍させて欲しい。