第39回 もっと化粧品に『アート』を取り入れたい!

【週刊粧業2018年4月30日号10面にて掲載】

 我が社の事務所がある東京・銀座は今「アート」気分で盛り上がっている。

 そもそものキッカケは、昨年4月に森ビルとJ.フロントリテイリングがオープンさせた「ギンザ シックス」だ。能楽堂を擁し、草間弥生のアート、森美術館の知見があらゆるところに生かされている。そして今年は、ダニエル・ビュレンのストライプ。少し離れた日比谷には、今年「東京ミッドタウン日比谷」がオープンした。こちらは映画や舞台を擁して、三井不動産がオープンさせた。

 「アート」をテーマに取り入れた商業施設は、「一度は見てみたい」私のような物見遊山や観光目的で来店する人が多く、スマフォでパチパチと写真を撮るほど人気スポットになる。個人的なことだが、私の場合は何か買い物をする訳ではなく、何が楽しいという訳でもないが、非日常的なモノや空間に浸れるのが、なんだかとても嬉しい。本当は自宅も素敵なインテリアで、素敵なアートがさりげなく飾ってあるような家にしてみたいと思うが、一般庶民にはなかなか叶わない夢だ。

 そこでもっと身近なもので、少しだけ心がウキウキするようなモノができないかと考えたら、一番身近な化粧品のパッケージに「アート」を取り入れたら、さぞ楽しいだろうと思った。

 昔アパレル業界で働いていた時は、ファッションデザイナーたちはいつも「アートからインスピレーションを得た」などと発信することが多かったので、そんなイメージで化粧品パッケージもデザインできたら楽しいのではないかと考えて、ワクワクした。

 そんな「壮大な夢」を心に秘めて、容器デザインに関わってみると、なかなかそれはとても難しいことだということが、よく理解できた。まず今は、容器メーカー各社はとても忙しく、なかなか小ロットの容器を発注し難い。国内だけではなく、中国など海外でも日本製の化粧品はとても人気が高いので、容器の生産が間に合わないことが頻発し、人気商品は「販売中止、数量制限」なども起こっているようだ。

 すぐに生産できるのは、いわゆる「あり型」という容器メーカーの定番商品のみで、色使いや加工の仕方次第では、こちらもロットが少なければコストが高くなってしまう。ますます「アート」とは遠くなってしまうので、他社、他ブランドとの差別化もなかなか図れない。そもそも化粧品のパッケージは、その「ブランドのコンセプトや考え方=ブランディングをビジュアルに表現」するものなのでもっと気軽に、自由にデザインできたら、もっと楽しく、もっとバラエティーに富んだ製品が、多く世の中に登場するのではないかと思う。

 もちろん化粧品は、中身のバルクを使用する製品なので、容器にお金をかけるべきではないという議論もある。特に私が関わっている「通販化粧品」各社は、昔から「容器にお金をかけないで、中身で勝負する」と主張してきた会社も多い。それはそれで一理あるが、では「ワクワクする」ことや「楽しい」「嬉しい」など五感に響くモノは、なかなか生まれ難くなるのではないか?

 「アート」で商業施設や街が変わっていくように、一枚の絵画で自宅のリビングがレベルアップするように、毎日触れる化粧品も、もっと気軽に「わぁ~!」と感動するような「アートのインスピレーション」から創れる環境があってもよいのではないかと思う。
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鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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