【週刊粧業2018年11月26日号4面にて掲載】
最近、化粧品販売の統計データを調べることがあった。辞書のような分厚いデータ集と首っ引きで数日間を過ごすことになった。これまで、統計的なデータは市場の動きを後から追いかけてくるので、『先読み』の資料としては、あまり役立つことは少ないと思っていた。しかし、あらためて事細かく資料を見てみると、意外に役立つことが多いことがわかった。
まずここ5年間の販売データの変化を見てみると、マーケットのトレンド変化がよく分かる。
日本の化粧品販売額は、5年間で120%あまり伸びている。しかし国内だけでみると毎年の伸び率はごくわずかで、大きく売り上げを伸ばしているのは、海外からのインバウンドとアウトバウンド、越境EC等の海外需要だ。ほとんどの化粧品メーカーの活況は、海外の方々のニーズに支えられてきたといっても良い。
ただし国内で人気のあるブランドでないと、海外の人々にも人気は出ないようだ。国内とニーズが少し異なるのは、中国マーケットの『パック人気』。中国女性のスキンケアニーズを調べると、第一に人気があるのはパックで、日本人の『化粧水好き』と同じような傾向があるようだ。「中国人は朝パックで顔を洗う」と言う人もいるくらいだ。
国内マーケットの半分弱程度を占めている『スキンケア』は、二極化の傾向が見られる。1つは通販化粧品から火がついたオールインワンに代表される「時短ニーズ」に応える商品群で、初期の頃とは異なって、「○本の役割をこれ1つで」という売り方にプラスして、美白効果や乾燥小ジワ対策など「さらに○○もできる」と『専門特化』型も出てきている。
一方では、「与えるスキンケア」ではなく、クレンジングや洗顔などの「落とすケア」の方でも、「W洗顔不要などのオールインワン」が出てきている。こちらは「肌に負担をかけない洗顔」という切り口になっている。しかしいずれにしてもこれらは、面倒くさいものはまとめたい「時短ニーズ」に応えたものといえよう。その対極に位置していると思われるマッサージ関連商品は不振が続いており、「面倒なことはやりたくない」という声が聞こえてきそうだ。
もう一方の傾向は、アンチエイジング、美白、超保湿などの『スペシャルケア美容液』関連だ。1商品の売上で100億円超えも出るほどのヒット商品が生まれて、ニーズを牽引し続けている。これは、「肌悩みは徹底解決したい」というニーズに応えた『機能性サイエンスコスメ』というべき分野で、早く確実な効果を出したいという「スピードニーズ」と言えよう。あわせて「気になるところをケアしたい」というパーツケアも、これまでよりニーズが高まっているようだ。予防分野では、UV商品が全ての世代にその必要性が理解されつつあるようで、ニーズも定着しつつある。
「時短ニーズ」も「機能性サイエンスニーズ」も、両方とも忙しい女性たちの生活が垣間見られるような傾向である。
メイク商品では、「見栄え」が重要になっているようで、「インスタ映え」などの言葉に表れているように、「どう見えるか?」が購入のニーズになっており、目や唇のポイントメイクやベースメイクの人気に繋がっているようだ。これも「どうせメイクをするなら、きれいに見せたい」という気持ちの表れのようだ。つまりお客様の要望は、よりストレートに、より直接的に、よりスピーディーになってきていることがよく分かる。
このように、たまに販売データを俯瞰で見てみると、あらためて大きなニーズの変化が読めるので、過去の振り返りだけではなく、これからのマーケットのトレンド変化を予測するのにも役立つような気がした。