連載コラム

激変するコスメマーケット

2019.12.02

第47回 『コンセプト』で売れ

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

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【週刊粧業2019年5月20日号5面にて掲載】

 あるヘアケアメーカーの株主総会で、配布されたパンフレットに記載されていた言葉がとても印象に残った。会社の活動を表すキーワード集の中に「モノを売るな、コンセプトを売れ」とあった。私は思わず「これだ」と膝をたたいてしまった。同社の業績が快進撃を続けている理由の一端が、よくわかった気がした。

 実は弊社で毎月のように行っているお客様へのインタビューでも、同様の意見を伺うことが多い。特に1つのブランドを長く愛用してくださっている「ロイヤルユーザー様」のインタビューでは、それを実感する。

 10年、15年と長く同じブランドを愛用してくださっているお客様にその理由を伺うと、多くの人がそのブランドの考え方が「好き」だと答える。もちろん好きな理由は様々だが、その多くが会社の考え方や姿勢、ポリシーといったものに共感していることが良くわかる。そしてあるお客様から「商品は3年~5年でリニューアルすることが多いけれど、考え方はあまり変わらないので、そんなところが好きだ」と言われた。

 もちろん商品が好きでなければ、長く愛用してくださるロイヤル顧客にはなってくれない。同時に長い間リピート顧客として愛用し続けてくださるには、商品力だけでも難しい。まして最近は、各社の技術は拮抗しており、商品での差を出し難い。そんな中で各社のこだわりやポリシー、オリジナル性などが微妙な差を生み出すことに繋がる。

 その原点にあるものが「ブランドコンセプト」である。それはお客様に向けてのメッセージであるが、係わる全てのスタッフにも理解され、すべての活動に貫かれていなければならない。ブランドコンセプトは業務全ての中心に位置する考え方だ。だからこそお客様は、その微妙な差を見分けて、商品の後ろにあるコンセプトを見抜き『ファンになってくれている』のだと思う。

 このコンセプト重視の視点は、これからの時代にこそ不可欠な視点だと思う。モノが良いというだけではファン化は難しく、何事にも「共感」を得なければ、ブランドとして成立しない時代。お客様とブランドを繋ぐ「共感」を表すものが「ブランドコンセプト」なので、それを磨き上げなければ、お客様から継続して支持を得ることはできない。

 そしてまたもう1つ、「ブランドコンセプト」は業務の全てに係わることなので、1人のカリスマや経営トップだけで作り上げることは不可能だ。係わる全てのスタッフ、社員はもちろんのこと、関係する協力スタッフ全てが、「ブランドコンセプト」を信じて、同じ方向を見て改善・改革を続けなければ、すぐに陳腐化してしまう。同時にその中には、お客様も含まれる。同じ「ブランドコンセプト」を信じ、賛同してくれる大切なメンバーとして、お客様も企業活動に参加している。

 「モノを売るな、コンセプトを売れ」という言葉には、襟を正される思いがした。果たして、自信を持って「わが社は、わが社らしい独自のコンセプトで売っている」と言える人がどれだけいるだろうか?

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プロフィール

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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