第19回 「イギリス最大の小売業」(テスコ デビッド リード元副会長)

【週刊粧業2020年4月13日号31面にて掲載】

 15年ほど前、ロンドン郊外のチェサントにあるイギリス最大の小売業「テスコ」の本部(テスコ ハウス)で、デビッド リード副会長に2回ほどインタビューした。

 非常に穏やかな紳士で、私の質問に丁寧に答えてくれた。まだ日本やアメリカに進出する前だったが、イギリス国内で展開する5つの業態や、力を入れているネットスーパー事業などについて詳しく語ってくれた。

 テスコは、イギリスを中心に、中欧、アジアにも進出しているグローバルリテイラーだが、イギリスでは5つの業態で№1のシェアを維持している。

 最も大型のハイパーマーケット「テスコ エクストラ」は、迫力ある売場づくりが最大の特徴だ。大型のスーパーマーケット(スーパーストア)や、標準型スーパーマーケットは「テスコ」の店名で、都市型小型スーパーマーケットは「テスコ メトロ」、コンビニエンスストアは「テスコ エクスプレス」の店名で展開している。最近では買収により、エスクプレスの店数を一挙に増やしている。

 「当社は、オウンブランド(PB)の比率が50%を超えており、お客さまから根強い支持を得ています。オウンブランドは、ハイパーマーケットでも、スーパーマーケットでも、コンビニエンスストアでも、品揃えの幅はもちろん違いますが、売価は同じです。また小型の業態については、ほとんどが自動発注方式でオペレーションしています」

 ヨーロッパの小売業界の特徴は、このオウンブランド比率が極めて高いことだ。また寡占度合いが高いことも共通している。しかも寡占度は北方に行くほど高い。

 イギリスのスーパーマーケット業界は、このテスコをトップに、セインズベリー、アズダの3強が鎬を削り、ウェイトローズなど、ややクオリティの高いスーパーマーケットもそれなりのシェアを取っている。このほか有名なマークス&スペンサーも食品の比率を高めている。

 だがこの間隙を抜ってイギリスで急成長しているのがドイツのアルディ、リドルに代表されるハードディスカウンターである。品揃えを限定した小型業態で、オウンブランド比率が極めて高いことが特徴だ。

 このドイツ勢に苦戦を強いられているのがウォルマートの子会社であるアズダだ。ウォルマートはこのアズダとセインズベリーの経営統合を画策したが、独禁法に阻まれて現在は白紙となっている。

 テスコのもう一つの特徴は、イギリス全土に張りめぐらされたネットスーパーのネットワークである。テスコの代表店を取材したが、従業員が店内でピックングして、専用の配送車で運ぶ状況をつぶさに観察できた。

 「当社のネットスーパーは、イギリス国内の9割以上のエリアをカバーしています」とリード副会長は自信を見せた。

 なおテスコは前述のように、日本とアメリカに進出したが、いずれも失敗に終わり撤退している。日本では買収により、アメリカでは直接進出によって、いずれも小型業態を展開したが目算が外れた。

 5年ほど前までは、テスコも前述のドイツ勢に苦戦を強いられ、業績も低迷したが、既存店の抜本的な改革が効果を上げ、ここ数年の業績は上向き傾向にある。
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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