【週刊粧業2016年4月11日号5面にて掲載】
敏感肌コスメ市場はおよそ600億円。化粧品市場全体からみれば規模は小さいですが、直近の3年間では毎年2%前後の堅調な推移が続いています。
■敏感肌のターゲット
そもそも化粧品業界において『敏感肌』の確立された定義はありませんが、概して生活の乱れやストレス、季節の変わり目などで不調になる一時的な肌を指します(アトピーやアレルギー体質を含むこともあります)。
では、敏感肌と感じている女性はどれくらいでしょうか?
その割合は、質問の仕方により大きく異なります。『敏感肌』を乾燥肌や脂性肌といった「肌タイプ」のひとつに分ければ1割程度ですが、「経験」とみれば7~8割にのぼり、全く異なる割合になります。
実は、ここに敏感肌コスメのターゲティングの難しさがあります。というのも、1割のコア層をターゲットにすれば、的確なアプローチはできますが、数が少ないためあまり大きな売上げは見込めません。
一方、7~8割の経験層をターゲットにすると、市場の潜在性は大きいですが、自分向けのブランドとして受容してもらえないというジレンマがあります。近年、『敏感肌』という言葉をあえて使わず、もう少し広い意味を持つ『ゆらぎ肌』でアプローチするブランドもありますが、その曖昧さゆえに、本来そこに含まれるはずの敏感肌女性を獲得できていないケースもみられます。
もうひとつ、敏感肌コスメのターゲットを考えるうえで重要な視座が、消費者から見たポジショニングです。季節の変わり目に肌に刺激を感じる女性が、必ずしも敏感肌コスメを選ぶとは限りません。もしかしたら、より安心・安全な化粧品として、『自然派コスメ』を検討しているかもしれません。
つまり、メーカーの思惑とは別に、消費者のなかでは敏感肌コスメと自然派コスメは十分に競合関係になりえます。その点を見失うと、敏感肌女性がなぜ『敏感肌コスメ』を使用しないのか、理解できないでしょう。
■機能性志向との融合
では、敏感肌コスメ市場で成功するポイントは何でしょうか?
同市場で近年売上げを伸ばしているブランドとして「ディセンシア」や「キュレル」などが挙げられますが、共通しているのは、敏感肌の特性と、美白ケアや抗老化ケアといったより一般的な機能性ニーズをしっかり結びつけている点です。
すなわち、「敏感肌だとなぜくすんでみえるのか、なぜ老けてみえるのか?」というように、敏感肌と具体的な肌悩みを内在的に解明し商品化しています。
これこそが、敏感肌で機能性アイテムを求める女性はもちろんのこと、現在の美白ケアや抗老化ケアに満足できない女性に敏感肌への気づきの機会を与え、自分向けのブランドとして受容してもらうことを可能にしています。
今後こうしたブランドがさらに増えれば、市場はまだまだ成長の余地はあるでしょう。