【週刊粧業2015年7月27日号5面にて掲載】
「おひとりさま」という言葉が世の中に浸透して久しいですが、かつて「おひとりさま」向けといえば、「一人で気兼ねなく入れるお店」や「一人旅」のツアー等、「おひとりさま」自体をターゲットにしたサービスが目立ちました。が、最近は「おひとりさま」同士が交流できるような企画やイベントがここにきてまた盛況です。
グラフは、厚生労働省が発表した人口動態総覧の年次推移ですが、婚姻率は緩やかながら年々低下しています。妙齢になると世帯を持つ、といった少し前の日本の風潮から単独世帯の増加によって「シングル」需要を無視できない時代となってきました。
男性の「おひとりさま」も確実に増えていますが、冒頭で述べた女性のコミュニケーション力がもたらす「交流」による消費も形を変えニーズが増すと思われます。
女性は男性に比べ、有職無職にかかわらず、社交性が高く、コミュニケーション力もあり、新しいものを試すことに積極的という特徴を持っています。女性の方が「変化」を楽しむことができるのです。
例えば、女性誌が主催するヨガやランニングのサークルは盛況のようですし、「知らない人と交流する」食事会等も盛んで、女性ならではの社交性の高さを表しています。
以前、この類のイベントを取材した際に、「ふだんの友達には話せないことがしゃべれるのが魅力」「友達とは価値観が合っても趣味が合うとは限らない。純粋にスポーツで一緒に仲間と汗を流せるのがいい」というふうに参加者は、ここで真の友達を作りたいというニーズよりも、趣味や志向の合う仲間と同じ時間を共有したい、という気持ちが強いようです。
そして、夫婦世帯でも常に一緒に行動するわけではなく、どちらかのみがイベントに参加する、といったケースも増えており、「おひとりさま『交流』市場」は今後、それなりのボリュームを占めていくのではないでしょうか。
日本のように「モノ」に対して成熟した市場だからこそ、「志向が合う仲間と交流したい」といった知的好奇心や精神性を満たす「コト」ニーズは多様化し、そこに応えるサービス開発も可能性を秘めているといえるでしょう。