【週刊粧業2020年10月26日号5面にて掲載】
コロナ禍が続いており感染者も毎日多数発表されている。しかし経済活動は止めるわけにはいかないという訳で、多くの会社が様々な感染予防対策を講じながら、通常の業務を続けているようだ。
弊社も同様にしばらく自粛していた業務を、何とか工夫してコロナ禍前と同じように再開した。その中の1つがお客様のグループインタビュー。
先日久しぶりにWebでのお客様グループインタビューと、感染予防対策を徹底した対面でのグループインタビューの両方を実施した。
Webのグルーインタビューの場合は、一度に人数を多くして実施することは難しいが(1回3~4名程度)、全国から参加してもらえるし、ほとんどが自宅からの参加なので生活状況を少し垣間見ることができる。
しかも画面越しのインタビューなので、対面型の座談会よりも他人の発言をよく聞いてくれることがわかった。
対面でのグループインタビューは、平常時と異なってアクリルボード、フェイスシールド越しなので、やや勝手が異なるが、それでも直接対面なので、表情やニュアンスも伝わり、参加しているお客様も楽しそうに過ごせたようだ。
弊社では「お客様に直接お話しを聞くこと」を企画立案や開発業務の前提条件として、最も大事な業務と考えているので、コロナ禍の中でもそれを止めるわけにはいかない。
そしてこんな時期だからこそお客様から「家にこもってばかりでおしゃれもできない、出かけることもダメの中で、久しぶりに出かける理由ができて、しかも思いっきり化粧品の話ができたことがとても嬉しい」とたいへん喜んでいただいた。
そしてこんな時期だからこそ、「なぜ化粧をしたいのか?」まで踏み込んだお話しも聞くことができた。
自粛期間中、あるいはリモートワークになってあまりきちんとお手入れをしなくなってしまったが、今それを反省しつつあるお客様も数多くいた。
時間がある時ほど、「家事も大事だが、自分の肌や髪のお手入れも手抜きをしたくない」という嬉しい言葉を聞くこともできた。
ある70代の女性は、長い期間、親や夫の介護をしてきて、やっと肩の荷を下ろし、「これから自分自身のためにいろいろやりたいと考えて、思いっきりおしゃれをして出かけたいと思っていたらコロナ禍になってしまった。でも今は前向きに考えて、様々なお手入れ方法を学ぶ時間にしたい」とおっしゃっていた。
また20代後半の女性は、「残業続きの仕事のストレスで肌が荒れてしまい、ひどい敏感肌になってしまった。毎日すぐれない気分で過ごしていたが、今の時期にどうにかしてこれを克服し、もともと明るい性格だと言われていた自分を取り戻したい」と、現在の心境を語ってくれた。
このようにグループインタビューでお客様の発言を聞くと、化粧品を使ってどうなりたいかは、1人ひとり様々な願いがある。その背景にはそれぞれの人生が垣間見える。
化粧品はモノとして販売するだけでなく、それを使って正しいお手入れしてもらい、美しさと自信を手に入れて欲しい商品である。
そこにはもちろん、「こうなりたい」というもともとの願いがあるはずだ。それを叶えてあげることが我々の最終目的のはずであり、我々の存在理由もそこにある。
10年ほど前、メイクをして写真を撮るイベントに参加した80代後半のお客様は、プロのメークアップアーティストにメイクをしてもらい、プロのカメラマンに写真を撮ってもらう体験が初めてだったようで、すごく喜ばれた。
その時「これは私の遺影にします」と笑顔で言ってくれたことは、長く私の記憶に残っている。コロナ禍の中でも、お客様の願いをかなえるための化粧品販売をしっかり提供し続けるべきだと思う。