第61回 不要不急リストに入らず、選ばれる商品になる!

【週刊粧業2021年1月11日号8面にて掲載】

 コロナ禍になって一番変わったことは何かと言えば、外出とか、買い物とか、取り急ぎすぐに必要でないもの、“不要不急の行動”を止めたことではないかと思う。

 しかも3月~4月の緊急事態宣言当時は、「ある程度の期間を我慢すればよい」と考えて自粛生活に入ったので、まだ心のゆとりがあった。

 コロナ禍の生活も長く続くと、いろいろほころびも出てくる。緊急事態宣言の時のような、張り詰めた緊張感は少し緩んできていると思う。外出や移動もそんなに心配しないようになってきた。

 ところが買い物行動はなかなか元に戻らない。食品や生活必需品は購入金額も増えたが、反対におしゃれなファッションやメイク商品などはほとんど買わなくなった。

 まず、買い物する前に「本当にいま必要かどうか?」を考えるようになった。しかもこれが長く続くと、生活の中で習慣化してくる。だんだん楽しみが少なくても不自由しないシンプルな生活が定着してくる。

 これではお客様をワクワクさせる前に、自分がワクワクしないので、感動を与えられるようなサービスができるはずがない。そう思い直して、いまやるべきことを考えてみた。

 それは「商品価値の棚卸」。いまの時期に自分のブランドを磨き上げておくことが、アフターコロナに飛躍するために必要なことではないか?

 コロナ禍が明けても、変わらない自分たちの主張、メッセージ、こだわりをいま深く考えて、言葉や表現を見直し、磨き上げることこそ、「ブランド価値の棚卸」と言える。実際に弊社では、「コンセプトの再構築」案件の相談が多くなっている。

 自分たちの大切にしたいこと、好きなこと、嫌いなこと、やりたいこと、やりたくないこと、どうでもいいと思っていることなどなど、ブランドの考え方を明確にして、その存在理由を考え直してみることも、いま大切なことではないか? 何しろ不要不急の商品やブランドは衰退し、忘れられる存在になってしまったのだ。

 だからこそ自分たちこそは忘れられない唯一無二の存在になるべく、その個性、ユニークポイントを磨き上げ、強くアピールしていく時期ではないかと思う。

 しかし、今日の創造作業(クリエイティブ)は、一人では何も生み出せない。今日の企業活動や商業デザインは共同作業である。

 多くの人たちとの共同作業のクリエイティブから、新しい考え方や課題やコンセプトが生み出されている。人と人の知恵や想いが触れ合うことで、新しい何かが生まれているため、コロナ禍になって対面の雑談が少なくなったことは大きな痛手だ。

 雑談が新しいコトやモノを生み出すきっかけになることも多い。目的のない会話や何気ない一言が課題を紐解くきっかけにもなる。

 これからはWebミーティングをフル活用して、自分で考えたこと、相手の意見を聞くことなど、共に時間を過ごすことで共有できるクリエイティブな時間を生み出さないといけない。

 その結果、ブランド価値を磨き上げ、コンセプトを明確に言語化し、商品を見直す、開発方法を棚卸する、お客様に約束できるルールを作る、表現や演出などのVMDを見直す、サービスやおもてなしの内容も見直す。

 そして関わるスタッフの行動を変える。これがアフターコロナ時に新しい価値を生み出す原動力になるのではないか?
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鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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