創業46年を迎えるコーロ(大阪市北区、播磨正文社長)は、専門店「COHRO e-PRO」(以下、「コーロ」)を大阪市内の富国生命ビル内に展開してきた中、2007年、都市開発によるビルの建て替えにより、ディアモール大阪の中心部に位置する梅田DTタワー地下2階、「ディアモールフィオレ」内に移転した。
3つのストリートで三角形をつくる地下街・ディアモール大阪には、阪神電鉄梅田駅とJR東西線北新地駅をつなぐ利便性から、1日に約5万人近い通行者がある。その三角形の焦点に位置するディアモールフィオレへの来店者は、ターゲットを若い女性向けに絞り込んでいることもあり、約8000人とそれほど多くない。約23坪という区画よりも広く感じられるのは、一般通路を挟んでの商品展開が可能なレイアウトになっているからだろう。
約50坪で展開してきた移転前と同様のブランド・商品数を並べることが難しい中、スキンケアとメークアップ中心のラインアップで、専門店の肝となるカウンターはもちろん、エステルームも完備している。「取り扱いブランドやアイテムを厳選し、『心機一転』 という気持ちで望んだ」(播磨社長)という思いは、黒を基調とした展開から一転、テーブルから壁紙まで白一色に統一した店内レイアウトからも伝わる。
駅周辺には百貨店のほか、ドラッグストア、バラエティショップ、ディアモール内にも競合となる専門店やメーカー直営路面店が点在する中、2009年度売上高が前年比5%増と好調に推移した 「コーロ」 を取材した。
移転後の離客をサービス向上の原動力に、
個別ホームケア提案で顧客満足度アップ
「この1年は、売上げがサービスに反映して上がってきたと実感できた。『ようやく』という感じ。立地的には申し分ないが、当初は心配が山積みだった」とオープン当初の苦労を播磨秀宜店長は振り返る。
ディアモールフィオレは、所得が比較的高い、働く女性をメインターゲットに「コーロ」を含めた9店舗で構成されるビル内モールにあり、商品や美容情報のチラシ配布などの販促活動には厳しい制限がある。新規顧客からは「入りにくかった」との指摘も度々あるほどで、外観や内装も他8店舗との調和を図らねばならなかった。そのため「オープン前は本当にうまくいくのか、不安がよぎった。それでも、数百メートルとそう遠くない移転で済んだため、『既存顧客の来店があれば……』という淡い期待を抱いていた」(播磨店長)という。
しかし「オープン後、来店した既存のお客様は約3割だった」(播磨店長)と、密かに心配していた移転による顧客離れが生じてしまった。「それならば」と強化したい新規顧客獲得に向けた販促活動も制限されており「化粧品販売の難しさを改めて痛感した」(播磨店長)という。
そうした経緯もあり「移転リニューアルというよりは新店」の意識で開始した「コーロ」も3年目を迎え、新規会員も1カ月平均100名までに成長している。
「まだまだ移転前の売上げには至らないが、1坪あたりの売上高は年々高まっている」(播磨店長)と、移転によって生じた障害をステップアップの踏み台にできたという実感は、新規顧客数やそのリピート率など数字になって表れてきた。
顧客年齢層は施設内利用層と合致しており、30代が約3割と最も多く、20~40代のボリュームが大きい。美容意識の高い働く女性や所得の高い主婦層が多いことから、月3~5万円の顧客は約1割、10万円購入する顧客も珍しくないという。
その顧客のロイヤル化の成功は「テナント出店する以上、できないことを悩むよりは、その制限がある中でできる最大限のことを訴求していく」(播磨店長)という意識が大きいと分析している。
来店者には「必ずキレイになって帰ってもらう」という気持ちを浸透させることで、カウンセリングからお手入れ法へとつなげる接客・サービスの質は違ってくるという。新規顧客にもサンプリングは欠かさず、店の印象が残るサービスを徹底している。また、肌の悩みとは異なり、ホームケアの方法は、顧客一人ひとりの生活環境やリズムに合わせて提案している。
とはいえ、言葉や1回のデモンストレーションで伝えることは難しい。また、肌質は日々変化するため、より効果的なホームケアを体で覚えられるようなレッスンの導入も将来的な構想としてあるという。
「入りにくい」を「隠れ家的特別感」に、
カウンセリングからの複合提案を強化
さらに、通行しているだけでは気づきにくい「奥まったエリア」というデメリットが、思わぬ効果をもたらした。「かえって隠れ家的な特別感をもたらした。座ったお客様からは『落ち着いてカウンセリングを受けられる』などの意見をもらうことが多い」(播磨店長)と、リピート率向上につながった。
また、チラシ配布もセールもできない環境下で月100近い新規会員があることから「1度来店したお客様のクチコミで広まっている」(播磨店長)という実感があるという。店舗の認知度が高まったことで、取扱ブランドや季節毎に行うキャンペーン、新商品情報をHPで事前に確認して来店する女性も増えており、「好立地」のメリットも表れてきた。
そうした複数の要因が重なり、目的来店の女性率の拡大は「売上構成比の9割がスキンケアである」(播磨店長)というコメントが象徴しており、今後は、スキンケアからメークアップのアドバイスなどを行い、複数購入につながるサービスの向上および強化を課題の一つとしている。
今秋、移転前地に新店オープン、
3年のノウハウを詰め込んで原点回帰
「顧客満足度はスタッフの職場満足度も影響する。経営側の視点に立てば、スタッフもお客様として捉えて、働きやすい環境と関係性を構築し、お店全体で『キレイをプロデュースできる』イメージを高めていく必要性がある」と、播磨店長は持論を展開。続けて「台帳をメーカー毎に分けず、まとめることで売上げが好調になった専門店も少なくない。
その善し悪しも話には聞いているが、実際に経験してみないと分からない。台帳を一本化することで、実際に顧客の反応やスタッフの作業にどう影響するか、試してみたい」と話す20代の播磨店長は、商品や顧客の育成とともに「コーロ」の価値向上に向けて、「練っている施策や構想を実験的に取り入れていきたい」という。
その実現の第一歩となるのが、今秋控えている新店だ。「発祥の地でまた専門店を開きたかった」という播磨社長の念願でもあった地上28階・地下4階の高層ビルに生まれ変わる、高級感溢れる新・富国生命ビル内にオープンする。
「当初の計画では、ビル完成までの仮店舗のような意識で移転したが、予想以上に新規会員からのロイヤル顧客化に成功した」(播磨店長)ことから、2店舗経営を決意したという。
それに先立ち、スキンケアをはじめ、ヘアケアやボディケアなども含め、新たなブランドも積極的に取り扱う方針で、現在、専門店で販売したいメーカーも募集中だ。店舗環境も活用した経営ノウハウを得た同社は今回、発祥の地での新店オープンに心配よりも期待を大きく膨らませている。
この記事は週刊粧業 掲載
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