少子高齢化を背景に先細る消費の購買力や、長引く円高で悲鳴をあげる大手輸出業のほか、東日本大震災だけにとどまらない自然災害の脅威に翻弄されて日本経済が疲弊している。そうしたなか、必需品産業として盤石の基盤に支えられてきた化粧品・日用品のマーケットも大きな変わり目に向き合っている。かつては製造小売業の繁栄を支えたキーワード「大量生産・大量消費」の図式が根底から覆り、デフレ経済による危機感を一般メディアが連日で伝えている。現在、化粧品・日用品に係わる事業者が向き合っている局面は、歴史上に横たわる過去の難局に照らし合わせた時、本質の部分でどのような実態だと捉えるべきか――。本紙は社歴や業容から「有力」と判断できるヒノキ新薬の阿部武彦社長に登場を願い、現在の局面を切り抜ける方策や心のあり方を語ってもらった。
――消費や経済の先行きへの不透明感が根強い日本経済の「再生」について是非お考えをお聞かせ下さい。
阿部 近年の世界経済では、モノをきちんと作って財を生み出す産業について蔑ろにされてきたとまでは言いませんが、要するに世界の目がファンドといった博徒達に掻き回されていると思います。
日本でもバブル経済期に、財テクブームによる株投資や土地転がしが起こりました。投資は投資でも、レアアース採掘など自然エネルギーを活かす技術開発といった産業投資ならば良かったのですが、「馬鹿な奴が損をして賢い奴が儲けて何が悪い」と考える博徒集団を生みだし、健全であるべき金融機関が巻き込まれました。年金や国債は何らかの形で運用しなければなりませんが、金融機関は運用先を誤ったのです。
運用を誤った悪しき例といえば、最近ではオリンパスが話題となりました。非常に素晴らしい技術力を持った企業であり、優秀な技術者がいる反面、経営者が博打をしていました。これに対し、技術者の方達はどう思っておられるだろうか、本当にお気の毒です。
博打による損失を隠す企業がある一方で、上場企業であるにもかかわらずそれを私物化し、博打の金を引き出す愚かな経営者もいます。個人の財産で博打をするのであれば責めることはありませんが、オーナーズカンパニーで自分の会社だと勘違いし、企業の資金を引き出し個人的に博打をすることは、常識では考えられません。
そんな中、健全で技術開発に知恵と汗を絞って良いモノづくりをしている企業が存在していることは救いです。しかし、バブル崩壊後のリーマンショックや東日本大震災によって、きちんと真面目に取り組む人達や企業体が痛めつけられました。
博打に手を染めていない企業、言い換えれば前科のない、あるいは賭場に足を入れたことのない真面目な企業と震災で困窮する企業に対し、国は全面的にサポートすべきだと思います。博打の前科があるかないか、これこそまさに仕分けるべきです。倫理観のある企業に対し、工場移転に必要な資金を無利子で融資すれば企業はやる気を出すはずです。
こうした企業が伸びてくれば、日本経済の再生はなし得ると考えています。やはり、博徒が儲かる世の中はおかしいと思います。
――化粧品業界の進むべき道について、どのような考え方が必要でしょうか。
阿部 化粧品業界には博徒とまでは言いませんが、ガマの油売りに近い商売があると思います。それは、化粧品業界に対して、他業界から安易な見方がなされている点にあります。
自分の本業が怪しくなると必然性無く化粧品業界へ参入し、そこには多少のきっかけはあるかもしれませんが、あまりにも化粧品業界を軽んじているように思います。宣伝広告費をかけ、使ってもいないタレントに使ったような顔をさせて、そうすれば売れると思われている事は悲しいことです。
薬の開発は大変であると一般的に理解されています。しかし、化粧品は良いキャッチコピーをつけて上手い宣伝をすれば儲かると見られていて、他の産業ではこうした理解はありません。
これは、化粧品を作る側が安易に取り組んでいるためだと思います。化粧品産業ほど、沢山メーカーがある業界は他にはありません。しかも不況になると乱立し、不況の逃げ道になっています。
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この記事は週刊粧業 掲載
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