花王、皮脂中に人のリボ核酸(RNA)が存在することを発見

粧業日報 2019年6月10日号 1ページ

花王、皮脂中に人のリボ核酸(RNA)が存在することを発見
 花王生物科学研究所は、皮脂の中に人のリボ核酸(RNA)が存在することを発見し、そのRNAを網羅的に分析する独自の解析技術「RNA Monitoring(RNAモニタリング)」を世界で初めて構築した。

 この技術を用い、皮脂中のRNA発現情報にアトピー性皮膚炎の肌状態が反映されていることを見出した。この研究成果の一部は、「第118回日本皮膚科学会総会」(2019年6月6~9日開催)で発表する予定だ。

 DNAは、アデニン・グアニン・シトシン・チミンの4種の塩基を含む2重らせん構造を持った分子で、塩基配列の違いから顔の形や体質等、人が生まれながらに持つ特徴を生み出す。一方、RNAは、DNAの情報に基づき、酵素やホルモンなど体内で様々な働きをするタンパク質を生み出す元となる分子で、DNAがその人固有のものとして一生変化しないのに対し、RNAは肝臓や皮膚等の組織ごとにプロファイルも合成される量も違い、その時の体調や環境によって日々変化するという性質がある。

 肌を例にとると、RNAは様々な環境要因により日々絶え間なく変化する肌状態を知るのに有用であるが、これまでは皮膚のRNA発現情報を分析するには、皮膚を外科的に切り取るなど侵襲性の高い生検が必要だった。

 昨今、唾液や尿など非侵襲的に採取可能な検体を利用して体内の状態を予測する技術開発が盛んに行われる中、同社では、皮膚のRNA発現情報を、肌を極力傷つけることなく分析することが可能になれば、その時の肌状態をより詳しく知ることができるだけでなく、体内状態についても知ることができる有用な技術になり得ると考えた。

 研究では、皮脂の分泌過程が細胞内の全成分をすべて放出する特殊な機構(全分泌機構)を有している点に着目。皮脂の中には、脂質だけではなく細胞内成分の1つであるRNAも含有される可能性を見出した。そこで、あぶら取りフィルムで皮脂を採取しRNAの抽出を試みたところ、皮脂中に人のRNAが存在していることを発見した。さらに、皮脂がRNAを分解する酵素(RNase)の作用を阻害することにより、RNAが皮脂中で安定的に存在できることを突き止めた。

 この知見に基づき、最先端の解析装置と花王で検討した解析方法を用いることで、皮脂中にある約1万種に及ぶ人のRNA発現情報を解析できる独自の技術「RNAモニタリング」を確立した。

 この技術を活用し、誰でも簡便に採取可能な皮脂を解析することで、手軽かつ精緻にRNAの発現情報を確認し、肌状態を把握できる可能性が示唆された。

 また、この技術を用いることで、将来的には、視覚的には判別できないような肌状態の微細な違いまでを知ることが可能になることも考えられるという。

 今後は、肌や体内の状態とRNA情報の関連の検討をさらに進め、一人ひとりの肌状態に合わせた美容の提案や、一人ひとりの健康状態に合わせたヘルスケアへの応用も検討していく。
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