ファンケルは、生体内に存在するタンパク質「チオレドキシン」に皮膚の真皮内にある「コラーゲン線維・弾性線維の構造を改善する効果があること」を新たに発見した。
同社では、アンチエイジングの研究として加齢とともに生じるシワやたるみの原因解明を行っており、これまで組織透明化技術と独自の3次元構造解析手法を用いて皮膚内部の構造を可視化し、皮膚内部の線維構造を構成するコラーゲンやエラスチンの加齢変化やその原因となる遺伝子を特定してきた。
今回の研究では、変化した線維構造を改善する化粧品素材の探索を行った結果、抗酸化成分として知られる「チオレドキシン」に皮膚内部の弾性線維構造を改善する働きを確認した。
なお、本成果は、第78回米国研究皮膚科学会議の発表要旨として7月に発行される「Journal of Investigative Investigative Dermatorogy 増刊号」に掲載される。
研究では、摘出皮膚組織を用い、皮膚表面にチオレドキシンを塗布したものとしないもので組織培養を行い、培養開始から数日後に共焦点レーザー顕微鏡を使用し、皮膚真皮層のコラーゲン線維と弾性線維を立体的に観察した。
試験は同一の摘出皮膚組織から得た3検体で実施し、いずれも塗布しなかったコントロールに対して、塗布した皮膚組織ではコラーゲン線維が増えるとともに、弾性線維がまっすぐに伸長している様子が観察された。これにより、皮膚内部の線維構造が改善されたことを発見した。
同社はこれまで、シワやたるみに関連するコラーゲン線維や弾性線維の構造変化について、組織透明化技術を用いた皮膚内部構造の可視化や、独自の3次元構造解析手法と遺伝子解析技術を組み合わせた最先端の研究を進める中で、加齢により弾性線維が短く曲がってしまい、コラーゲン線維から離れてしまうなど、変化の詳細を明らかにしてきた。
あわせて、その原因がEMILIN-1などの遺伝子と関係があることも確認してきた。それらを踏まえ今回の研究では、加齢によるこれらの変化を予防することや、改善できる素材の探索を目的として行った。
研究では、摘出皮膚組織にチオレドキシンを塗布することにより、皮膚内部のコラーゲンの量が増え、線維構造がまっすぐに伸びることを確認した。
チオレドキシンは、抗酸化能やトロポエラスチンの生産を促進することが知られているが、皮膚内部でコラーゲン線維や弾性線維の構造を改善することを、今回発見することができた。
従来ヒトの皮膚内部の弾性線維は、紫外線や加齢などで変性、喪失をしてしまうと、再構築されることは困難であると考えられてきたが、今回の研究結果から再構築を促進できる可能性がわかった。
今後、シワやたるみを予防・改善する化粧品の開発やメカニズム解明に貢献することが期待できるという。