近代化学、染色力と色持ちを重視したMSカラー処方を提案

C&T 2022年12月15日号 42ページ

カンタンに言うと

  • カラートリートメントとパウダーヘアカラーを紹介
  • 医薬部外品で長年培った技術の応用で機能性の高い化粧品ヘアカラーを実現
近代化学、染色力と色持ちを重視したMSカラー処方を提案
 今期で69期目を迎えたヘアケア専門OEMの近代化学(本社=神奈川県海老名市、岡部達彦社長)は、ヘアカラーを筆頭にパーマや育毛剤、シャンプー、トリートメント、スタイリング剤などヘアケアカテゴリー全般の開発・製造を幅広く手がけている。

 製品別構成比(生産数ベース)は、化粧品ヘアカラーが41%と最も多く、医薬部外品ヘアカラーが16%と続き、ヘアカラーが半数以上を占める。

 営業部 東日本営業課 係長の桑木野翔氏によると、主力製品である化粧品ヘアカラーにおいては近年、シャンプーの後に使用することで毛髪補修と白髪ケアを同時に行い、刺激臭が少なく手軽に使用できる「カラートリートメント」と、ナチュラル志向の高まりから植物の実や花、葉などの天然植物を粉末化したヘナやタイセイを原料とする「パウダーヘアカラー」への問い合わせが増加しているという。

 同社では2001年の化粧品の規制緩和に伴い、HC染料と塩基性染料を組み合わせたカラートリートメントの開発に着手し、2007年に製品化を実現。その後、2014年に現在の処方のベースとなる「MSカラートリートメント」が完成し、染色力と補修力を大幅に改良することに成功した。

 「カラートリートメントは2010年から2015年にかけて通販向けの市場が拡大し、一般的にも認知されるようになって出荷数が大幅に伸長した。その後一旦は落ち着いていたが、コロナ禍によっておうち美容の需要が高まり、自宅で手軽に使用できるカラートリートメントの売上が再び伸長している」(桑木野氏)

 パウダーヘアカラーに関して、同社では1996年にスリランカ工場(KINDAI KAGAKU LANKA LIMITED)を設立し、パウダーヘアカラーの生産をスタートした。2016年には、海老名市にある本社内に粉体ヘアカラー工場を竣工し、スリランカ工場で培ったノウハウをもとにパウダーヘアカラーの開発を進めている。

 「黒や茶色の自然な髪色にするには、植物原料だけでは難しい。そこで、カラートリートメントにも使用されるHC染料や塩基性染料をヘナと混合したハイブリッドヘナを開発し、ブラウン系の自然な色で染色することが可能になった。最近では米粉を配合したパウダーカラーを新たに開発するなど、日々研究に努めている」(桑木野氏)



医薬部外品で長年培った技術の応用で
機能性の高い化粧品ヘアカラーを実現

 ヘアカラー製品は、医薬部外品と化粧品の2種類に大きく分類され、酸化染毛剤(2剤式ヘアカラー)に代表される医薬部外品は毛髪内部での化学反応によって1度の使用で色がよく染まり、色も長く持続する。

 しかし、きれいに染色することに技術を要するほか、毛髪ダメージやアレルギー症状を引き起こすといったデメリットがある。また、製造・販売には薬事的な承認が必要で、開発コストや時間の面で参入障壁が高い。

 一方で、カラートリートメントに代表される化粧品のヘアカラーは医薬部外品と異なり、1度でしっかりと染色することができないという。その反面、繰り返し使用することで徐々に髪を染色し、毛髪ダメージやアレルギーを引き起こすといったデメリットがなく、薬事的な承認が必要ではないため、開発コストや時間の面での参入障壁が低い。

 「染色力と色持ちの向上は化粧品ヘアカラーの課題であり、お客様からもっと染めたい、染めてもすぐに褪色するといった要望・指摘があった。そこで、当社では医薬部外品ヘアカラーの開発で培った染料の浸透促進技術などを応用し、pHや毛髪補修、浸透促進などをキーワードに技術開発を行った。毛髪内部に成分を浸透させるにはキューティクルが障壁となるが、キューティクルはアルカリによって広がり、キューティクル同士に隙間が生じることが知られており、医薬部外品のヘアカラーではこうした作用を利用し、成分を毛髪内部に浸透させている。MSカラートリートメントではこの技術を応用し、化粧品のカラートリートメントでありながらも高い染色力を実現した。それに加え、補修力を高めて毛髪密度を向上させることで染料が吸着するための土壌が整い、これによって毛髪からの染料の流出を防ぎ、高い色持ちも可能になった」(研究開発部係長 宮内勇樹氏)



 パウダーヘアカラーの成分は増粘剤の小麦粉をベースに、ヘナやタイセイ、HC染料、塩基性染料といった染料、そしてトリートメントを目的とした植物粉末で主に構成される。処方の設計では、天然ヘナにHC染料や塩基性染料を混合することで、白髪染めとして人気の高い自然なブラウン系の色味ができるという。

 また、防腐剤フリーで肌に敏感な人でも安心して使用でき、HC染料や塩基性染料を除けば自然由来100%の処方も可能だ。

 パウダーヘアカラーでは、クリームタイプのカラートリートメントと同様、医薬部外品ヘアカラーで長年培ってきた処方開発技術を応用することで、ヘナによる強いハリ・コシ実感と、植物粉末からなるトリートメント作用の両立が実現し、特に加齢による猫毛に悩む人へおすすめだという。

 「2022年に開発したパウダータイプの新たなヘアカラーでは、増粘剤を小麦粉から米粉に置き換えた。米粉にはアミノ酸やビタミン、サポニンが豊富に含まれており、毛髪にツヤを与える作用がある。そのため、小麦粉を使用した従来品と比べると毛髪補修力が高い。ヘナによるハリ・コシと、米粉によるツヤの複合的な作用で、加齢による猫毛に悩む人にとっては小麦粉タイプよりも一層効果を感じられる製品だ。当社がパウダーヘアカラーの増粘剤に使用している米粉は、神奈川県海老名市にある地元酒造メーカーより精米の際に生じる廃棄処分となる米粉を買い取って原料としており、SDGsや地域活性化にも貢献するパウダーヘアカラーとしてOEMの提案を強化している。当社のように開発から製造、充填まで一貫してパウダータイプのヘアカラーを生産できる企業は国内でほとんどない。今後も引き続き、化粧品ヘアカラーのパイオニアとして長年積み重ねてきたノウハウをより一層ブラッシュアップし、クリームやパウダーなど様々な種類がある化粧品ヘアカラーの研究開発において、染色力向上や色のバリエーション拡大に注力していきたい」(宮内氏)
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