花王、アミラーゼを指標に唾液飛沫の付着場所を判断

粧業日報 2023年7月31日号 3ページ

カンタンに言うと

  • 重点的に清拭すべき場所の特定が可能に
花王、アミラーゼを指標に唾液飛沫の付着場所を判断
 花王は、唾液に含まれるアミラーゼを指標とすることで、簡便に唾液飛沫の付着場所を特定する方法を確立した。この技術を応用することよって、効率的な衛生管理が可能になることが期待できる。今回の研究成果は、国際学術誌「Journal of Infectious Diseases & Therapy」に掲載された。

 新型コロナやインフルエンザなどの感染症では、感染者のウイルスを含む唾液飛沫が物に付着し、それを非感染者が触ることで体内にウイルスを取り込んで感染する、接触感染が経路の1つと考えられている。そのため、感染防止には、周辺環境を衛生的に保ち、経路を遮断することが重要だ。特に昨今、効率的な衛生管理のために、ウイルスが付着した場所を特定する簡便な方法が求められている。

 同社では、ウイルスの多くが感染者の唾液とともに体外に飛散することから、唾液飛沫が付着した場所を特定することで、清拭すべき場所を明らかにする方法を検討し、唾液に含まれるさまざまな成分の中で、高濃度で存在し、安定的に採取可能であるアミラーゼに着目した。また、日常の衛生管理で使用するには、付着有無と量について簡便に把握できる必要があるが、今回花王は、イムノクロマト法を用いてアミラーゼ量を視覚的に判別できることを確認した。

 次に、実際に唾液飛沫付着場所からアミラーゼが検出されるのか、唾液飛散が起こる行動(咳、くしゃみ、食事)で調査した。調査では、対象者の周囲にプレートを設置し、各行動後にプレート表面を綿棒で拭き取り、イムノクロマト法でアミラーゼ検査を行った。その結果、唾液飛沫が付着していると考えられる対象者周辺のプレートからはアミラーゼが検出され、距離が遠いプレートでは検出されなかった。この結果より、唾液飛沫の付着場所を指標にアミラーゼを使用できる妥当性が示された。

 唾液中のアミラーゼとウイルスの残存時間を比較するため、アミラーゼとウイルスをモデル板上に付着させ、それぞれがどの程度残存しているのかを2週間継続して測定した。その結果、アミラーゼもウイルス遺伝子も経時的に減少することが確認できた。

 今回の調査でアミラーゼとウイルス遺伝子の残存期間が類似傾向を示したことにより、アミラーゼを検出することが、ウイルスの量を把握する上で有用であると考えられ、アミラーゼが多く残っているところは清拭が必要な場所だと判定できた。同社では今回の研究で得られた知見を用い、効率的な衛生管理に貢献できるような取り組みを進めていく。
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