花王、角層細胞のうるおい状態を可視化する新技術を開発

粧業日報 2023年8月29日号 3ページ

花王、角層細胞のうるおい状態を可視化する新技術を開発
 花王は、粘着テープで採取した肌の角層を顕微ATR-IRイメージング法を用いて解析した結果、角層細胞1つひとつのうるおい状態を画像として捉えることに成功した。さらに、角層細胞のうるおい状態を数値化し、定量的に比較できるようになった。

 これにより、角層細胞そのもののうるおい状態の経時的変化や、異なる製剤間でのうるおい状態の違いがわかるようになった。今後、角層細胞のうるおい状態を解析する新たな技術として、化粧品の開発に応用していく。

 肌の乾燥やかさつきは、年間を通じて直面することの多い肌悩みの1つであり、これを解決するために、肌(角層)にうるおいを与える様々なスキンケア商品がある。しかし、化粧水に関して、「うるおいが足りない」「効果がわからない」といった声も少なくない。また、同じ商品を使っても、うるおい効果の感じ方は人それぞれ異なる。

 そこで、多くの人にうるおいを実感してもらう商品を開発するためには、表面的なうるおいではなく、角層細胞そのもののうるおいを客観的に把握できる方法が必要と考え、研究に取り組んだ。

 従来、角層のうるおい評価は、専用の電極を肌に押し当てた際の、電気の通りやすさを指標としてきた。しかしこの方法では、肌に浸透せず肌表面に残っている成分の寄与も含んでしまっていたため、角層内部に浸透した成分のみを測定することは困難だった。そこで今回、角層内部のうるおいの程度を、細胞レベルで検出する手法の開発に着手した。

 特殊な粘着テープで前腕内側部のヒト角層細胞を採取し、粘着面内(200μm角)を顕微ATR-IRイメージング法で測定し、赤外吸収スペクトルの分布データを取得した。その中から、細胞を構成する主成分であるタンパク質の信号成分を取り出し、細胞像を作成したところ、角層細胞の継ぎ目には、細胞2層分のタンパク質があるために、細胞像には明るい網目状の構造が確認できた。

 次に、うるおい保持効果の異なることが想定される2種類のプロトタイプの化粧水製剤(A・B)を用いて、肌に塗布した際の角層細胞のうるおい状態の違いを調べた。まず、6人の被験者の前腕の角層細胞を採取し、その後化粧水を塗布し、ふき取り処理を行ったうえで再度角層細胞を採取。採取した角層細胞を、顕微ATR-IRイメージング法を用いて解析した。

 その結果、いずれのプロトタイプも、塗布直後よりも塗布4時間後の方が角層細胞のうるおいの程度が高いことがわかった。これは、角層細胞内部にうるおい成分が浸透したことによるものと考えられる。また、2種のプロトタイプ間では、角層細胞のうるおい状態の変化が大きく異なることも確認でき、プロトタイプAでは8時間後も角層細胞にうるおい成分が多く含まれていることが確認できた。

 今後はこの技術を、角層細胞のうるおい状態を解析する技術の1つとして、スキンケアの開発に応用し、多くの人々が抱える乾燥やかさつき悩みの解決、美しい肌の実現に貢献していく。
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