環境省の調べによると(「平成20年度環境にやさしい企業行動調査結果」)、2009年度にCSR報告書(ここでは、便宜上、環境報告書、社会環境報告書、サステナビリティ報告書などの他のタイトルの報告書を全て含むこととします)を発行した日本企業の数は、1160社に上りました。
上場/非上場の別では、上場企業が633社(51.6%)、非上場527社(29.3%)各々CSR報告書を発行しているとの調査結果が出ています。
日本には、CSR報告書の発行義務がありませんので、上場/非上場ともに、比較的多くの企業が、自主的にCSR報告書を発行していることになります。
〈CSR報告書の発行の動向〉
(出所:環境省「平成20年度環境にやさしい企業行動調査結果」)
主な化粧品メーカーを調べたところ、2009、2010年度にCSR報告書を発行している企業は5社ありました。ホームページにて、何らかのCSRの取り組みを公表している企業は3社あり、主要なメーカーのほとんどが、CSRの取り組みを何らかの形で公表しています。
報告書を発行している企業のほとんどが、「GPIサステナビリティレポーティングガイドライン G3」(以降「GRIガイドライン」とします)を参照しています。GRIガイドラインは、世界中で広く活用されているCSR報告書作成のための手引きであり、オランダのNPO法人Global Reporting Initiatiが発行しているものです。
GRIガイドラインは、経営トップのCSRの考え方、ガバナンス、各種マネジメント体制、経済・環境・社会活動の実績などを標準開示項目として紹介しています。タイトルはさまざまですが、CSR報告書を発行している企業のほとんどが、これらの開示項目をバランスよく報告しています。
しかし、ここ数年、増加傾向にある報告内容の選定方法については、開示が十分な企業はあまりありませんでした。GRIガイドラインは、標準開示項目を提示していますが、それら全てをCSR報告書に含めることを求めているわけではありません。
組織自らが、想定利用者(ステークホルダー)の意思決定に影響を与える/与えうる情報を評価・決定し、そうした情報を優先的にCSR報告書に含めることを推奨しています。また、その評価・決定プロセスを開示することを奨励しています(「Materiality(重要性)の定義」)。
日本では、企業に対しCSR報告書の発行が義務付けられているわけではありませんので、法規制で定められた開示項目はありません。また、たとえ、GRIガイドラインを参考にCSR報告書を作成したとしても、第三者によるチェックが義務付けられているわけではありませんので、組織が都合のよい情報を都合のよい内容で報告することが可能です。
報告内容の決定に「Materiality(重要性)の定義」を適切に導入しその方法を開示することは、CSR報告書が、想定利用者(ステークホルダー)の意思決定に影響を与える/与えうる情報をバランスよく含めていることを示すことになります。よって、とても重要な報告なのです。
田中計士
新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー
2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/
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