第5回では日本が数年後の適用を検討しているIFRS(国際財務報告基準)の概要について、第6回では業界各社の売上高にIFRSがどのように影響するかについて、それぞれ解説しました。第7回の今回は、IFRSが売上高以外のどのような財務指標に影響するかについて解説します。なお、解説は、2010年10月末日時点で適用されているIFRSの各基準を前提とします。
当コラム第2回『有価証券報告書で見る業界の10年』では業界の研究開発費や広告宣伝費などについて分析しましたが、これらの項目にもIFRSは重要な影響を与える可能性があります。
まず研究開発費についてですが、企業の年間の支出のうち研究開発活動に充てられたものは研究開発費として区分されます。現行の日本の会計処理では、研究開発費の全額が費用処理されますが、これに対し、IFRSが適用された場合、開発段階の支出のうち一定の要件を満たしたものについては資産計上されます。よって、第2回で取り上げた主要企業5社の最近の連結売上高に占める研究開発費比率は2.5%程度でしたが、IFRSが研究開発費比率の減少要因になる可能性があります。
また広告宣伝費についてですが、これにはテレビコマーシャルなどのスポンサー料や、口紅やファンデーションなどの店頭サンプルなどに関する支出が含まれます。例えばTVCMの場合、現行の日本の会計処理では放映期間にわたって期間按分して費用計上するなどが一般的ですが、IFRSでは1回目の放送が行われた時にまとめて費用計上するなどの事例も見られます。
また、店頭サンプルについては、メーカー側が保有する未使用の在庫については資産として認識されていることも多いですが、IFRSでは店頭サンプル等の宣伝広告用のものは未使用であっても費用処理されるべきと考えられます。よって、第2回で取り上げた主要5社の最近の連結売上高に占める広告宣伝費比率は5.9%程度でしたが、ここでもIFRSが増加要因や減少要因になる可能性があります。
田中計士
新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー
2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/
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