今回は、業界各社での資産除去債務の計上状況について解説します。資産除去債務という言葉を聞き慣れない方もいらっしゃるかも知れませんが、言い換えれば、固定資産の除売却(物件からの退去も含む)の際に、契約上又は法令上の義務により支払うべき費用です。
分かりやすい例で説明しましょう。皆さんがご家庭で使われていた家電を買い替え等で引き取ってもらう際、数年前から「家電リサイクル法」に基づいて収集・運搬料金やリサイクル料金を支払うようになりましたよね。言ってみれば、これは「家電リサイクル法」という法律に基づいた家庭版の資産除去債務に該当します。
同様の費用は会社でも様々発生すると思います。勿論、家庭と同じように会社でも以前から費用の計上はしていますが、実際に資産を除売却した時点で計上すれば問題はありませんでした。しかし、平成22年4月1日以降開始する事業年度からは新基準が適用になり、将来的に発生する時期と金額を見積もれる場合には、前もって計上しなさいということになったのです。
では、業界各社では具体的にどのような資産除去債務を計上しているのでしょうか。
まず第1に考えられるものとして、「不動産賃貸契約に係る原状回復義務」に関する費用が挙げられます。当業界では、自社所有ではなく賃貸で支店や店舗等を多数展開している会社も多いと思いますが、通常の賃貸借契約の場合、借主の原状回復義務が存在することがほとんどです。このような原状回復義務は、契約に基づく義務であるため、借主である各社は当該義務に伴って将来退去の際に支出する費用相当額を見積り、契約締結時を発生時点として資産除去債務を認識しなければならないのです。
次に考えられるのは、法律に基づく「有害物質の除去義務」に関する費用でしょう。アスベストやフロン、PCB(ポリ塩化ビフェニル)等の環境汚染物質は、各種の法令に基づき、一定の時点で除去・処分を行う義務が所有者側にあります。例えば、建築時点から年数がある程度経過した事業所・工場等を所有している場合、壁や天井にアスベストが含まれることが考えられます。また、購入してからの経過年数が長いエアコンには、処分義務のあるフロンが使われている可能性もあります。その他、工場等で長年使用しているトランス、コンデンサには、PCBが含まれていることもあるでしょう。当業界では、このようなアスベストやフロン、PCB等の処理に関して必要な費用を計上しているケースが多いのではないかと思います。
田中計士
新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー
2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/
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