上場各社が提出している有価証券報告書には、貸借対照表や損益計算書等の決算情報だけではなく、実に様々な情報が掲載されています。今回は、その中でも各社の株式の保有目的の開示について触れたいと思います。
株式は、貸借対照表上で「(投資)有価証券」という勘定科目で計上されますが、有価証券勘定の残高から判断するに、各社とも株式を多く保有していると考えられます。では、各社は一体どのような目的で多くの株式を保有するのでしょうか。
売買や配当による利益を得ることを目的に、資金運用の一手段として保有している銘柄も中にはあるかもしれません。しかしながら、そのような銘柄は極めて少なく、重要な取引先の株式を長期にわたって保有するケースが多いと思われます。
以前から日本では、複数の企業間でお互いに相手方の株式を保有する「持ち合い」という形態が多く見られます。重要な相手先と長期的に取引を行う証として、契約書だけでなく、お互いの株式も保有し合うのです。一時期、「持ち合い」の解消が進んでいるという報道もよく聞かれましたが、新規で取引を行う際などに、取引先の株式も保有するという商慣習は現在でもごく一般的です。しかしながら、以前は保有目的の開示規定がなく、各社が上記のような目的でどの程度の株式保有を行っているかは分かりませんでした。
そこで、2年前に「企業内容等の開示に関する内閣府令」が一部改正され、売買利益又は配当の受領といった純粋な投資以外の目的で保有している株式のうち一定以上の残高を有するものは、銘柄・株数・計上額に加えて、その保有目的を開示することになり、「持ち合い」を含む各社間の取引・連携がより明らかにされることになりました。
以下の〈別表1〉は、業界各社の平成23年3月期の有価証券報告書における開示状況を纏めたものです。
ご覧のように、各社ともかなり多くの銘柄・残高を、純粋な投資以外の目的で保有していることが分かります。また、開示されている銘柄に目を向けてみますと、金融機関や保険会社の他、原・香料、資材の調達先や卸売・小売業者が多く見られます。いずれも、当業界では欠かすことのできない取引先と言えるでしょう。特に小売業者は、百貨店のみならず、ドラッグストアやスーパーマーケット、コンビニエンスストアなど、様々な銘柄が見受けられ、多様なチャネルでの販売競争が進んでいることが伺えます。
田中計士
新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー
2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/
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