去る平成23年11月30日に平成23年度税制改正の一部を修正した「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律(以下、「再修正法」)、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(以下、「復興財源法」)が成立し、平成23年12月2日に公布・施行されました。今回は上記2法の公布・施行に伴う影響について触れたいと思います。

 何と言っても、「再修正法」・「復興財源法」の大きな目玉は、法人税率の変更です。「再修正法」では、平成24年4月1日以降開始する事業年度から法人税率が4.5%引き下げられます。一方、「復興財源法」では、平成24年4月1日以降開始する事業年度から3年間、法人税額×10%の復興特別法人税が課されることになります。これに伴い、利益に対する法人税・住民税・事業税(所得割)の合計額の比率である法定実効税率は以下〈別表1〉のように変更されます。
新日本図1.jpg

 しかしながら、法人税率を引き下げる改正であり、かつ平成24年4月1日以降開始する事業年度からの適用であるにも関わらず、〈別表2〉の通り、各社の税負担率が上昇するケースが多く見られました。これはどういうことなのでしょうか。
新日本図2.jpg

 通常、税負担率とは、法人税等の納付税額と税効果会計の適用に伴い計上される法人税等調整額の合計額が、税引き前利益の何%に相当するかを指します。

 上記の通り、法人税等の納付税額への影響は平成24年度以降ですので、少なくとも今年度中の影響はありません。一方で税効果会計とは、簡単に言えば会計と税務の処理の違いによる将来の納税額の増加額又は減少額を、繰延税金資産又は負債として認識するもので、公布・施行日以降に迎える決算から影響が生じます。

 主要各社とも、将来の税金の減少額を見込んで繰延税金資産を計上していますが、今回の税制改正によって、復興増税期間(3年間)を含めて将来の適用税率は下がるため、将来の税金の減少額は改正前の見込みよりも小さくなることになります。各社はこの減少額を公布・施行日以降に迎える決算で、繰延税金資産の取崩及び法人税等調整額の増加として認識しなければならず、結果として税負担率が増加してしまったのです。

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田中計士

新日本有限責任監査法人 シニアマネージャー

2000年、監査法人太田昭和センチュリー(現新日本有限責任監査法人)に入所後、化粧品、食品、宝飾品などの消費者製品メーカーを中心とした監査業務に従事。その他、株式公開支援業務、内部統制アドバイザリー、デューデリジェンス、経理財務専門誌への寄稿等、幅広い業務を行う。

http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/basic/cosmetics-and-toiletries/

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