第3回 ネーミングの工夫で化粧品・日用品業界で差別化を

【週刊粧業2015年10月19日号5面にて掲載】

 化粧品・日用品業界はブランディング・商標の観点から見ても競争の激しい業界です。だからこそ、ほんの少しのネーミングの工夫が大ヒットのきっかけになったりします。今回は、ネーミングの原則論を押さえた上で、成功事例から学びましょう。

 ネーミングの大原則としては、①読み・書き・話し・聞きやすいこと、②覚えやすいこと、③意味やイメージが伝わることなどが挙げられます。

 ①ができていれば他の人に伝えやすいので、評判が広がりやすいですよね。いい情報はネットでシェアされてどんどん広まっていきますので、特に読み・書き要素の重要性は昔以上に高まっています。

 また、②が難しいと指名買いや情報のシェアが難しくなってしまいます。文字数が多すぎる商標の登録が認められていないのもここに起因しています。

 そして、③があれば消費者の皆様に価値が伝わりやすいので、好ましいですよね。ただ、説明的な表現のみからなる商標は登録することができないので、弁理士の助言などを受けてバランスをとる必要があります。

 ネーミングの工夫で成功した事例として有名なのが、小林製薬です。「ブルーレットおくだけ」「トイレその後に」「ポット洗浄中」「熱さまシート」「ガスピタン」「集めてポイ」など、商品名を聞くだけでどんな商品なのかがすぐわかります。その一方、ただの説明ではなく覚えやすい形で上手に工夫して表現しているので、商標としても登録可能なものとなっています。

 一つだけ難点があるとすれば、小林製薬の特徴的なネーミングが広く知られるようになったことで、上に挙げた例のようなうまいネーミングの商品は他社商品でも小林製薬の商品のような気がしてしまうことでしょうか。ともあれ、成功事例の一つとして積極的に取り入れていきたいところです。

 もう一点、有名どころで資生堂「TSUBAKI」の例を挙げたいと思います。メガブランド戦略だったり日本女性のイメージを前面に押し出したりと他にも成功要因はありますが、ネーミングの観点からは、ポジショニングがポイントでした。

 外資系企業の英語ブランドに囲まれている中で、和のイメージを持ち、髪にいいと知られている「椿」を洗練されたフォントの英字で使用したことは強力な差別化につながりました。

 このように、業界内でのネーミングの傾向を分析し、差別化できるポジションを探すというアプローチは有用です。早速新商品のネーミングのヒントにしてみてください。
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髙橋 伸也

フルブルーム国際商標事務所 所長弁理士

早稲田大学政治経済学部卒業。日本でも数少ない商標専門事務所を経営。化粧品・日用品業界をはじめとした中小・ベンチャー企業の商標出願支援と外国・国際商標出願支援を得意としている。商標・ブランディングの専門家として数々のメディアに寄稿している。

http://www.fullbloom-tm.jp/

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