第9回 「最も働きがいのある企業」(ウェグマンズ フード マーケット ダニエル ウェグマン会長)

【週刊粧業2020年1月27日号5面にて掲載】

 アメリカの経済誌「Fortune」が、「全米で最も働きがいのある会社ベスト100」を毎年掲載しているが、それに23年連続で選ばれ、2019年は3位にランクされたのが「ウェグマンズ フード マーケット」である。日本の業界関係者のアメリカ視察でもウェグマンズは大人気だ。

 ウェグマンズは、ナイヤガラの滝に近い、ニューヨーク州ロチェスターに本部を置く。創業は1916年で今年は創業103年になる。ダニエル ウェグマン会長(前CEO)の祖父がこのロチェスターで、野菜と果物の行商を始めたのが同社のスタートである。なおウェグマン氏は現在、長女を社長兼CEOに、次女を副社長にそれぞれ就けており、ファミリー経営は第4世代に入っている。

 現在同社は東部7州に101店を展開しており、2018年度の年商は92億ドル(約1兆円)の規模である。1店平均の年間売上高は100億円という全米でも群を抜く繁盛店である。売場面積は2000坪から4000坪と大型で、5000坪近い大型店もある。10月27日には、ニューヨーク市ブルックリン ネイビーヤードに最新店をオープンしている。

 店舗の特徴は、創業以来最も重視しているプロデュース(青果)を中央にレイアウトし、その右ないし左にペリシャブルフーズ(フレッシュフーズ)、反対側にグローサリーを配置している。店が巨大なため、買物頻度の高い商品を片側に集積するユニークなレイアウトだ。

 最も有名なコーナーが「マーケット カフェ」である。レストラン経験が豊富なシェフ達が、お客の目の前で調理し提供してくれる。100席から300席あるメザニン(中二階)のフードコートですぐ食べられるし、持ち帰りもできる。

 ロチェスターの本部で当時、社長兼CEOだったウェグマン氏とインタビューした。非常な親日家でもある同氏は、私の質問に笑顔を絶やさず率直に答えてくれた。

 当時、ウォルマートのスーパーセンターが勃興期で、次々と既存のディスカウントストアをスーパーセンターに業態転換していた。

 「ウォルマートのスーパーセンターはなかなか手強い存在のようですが」 

 「ウォルマートはアメリカ人の食生活の『平日部分』を主としてターゲットにしています。ウェグマンズの強みは、『平日部分』はもちろんですが、ご家族に自慢の手料理を食べさせたいと思っている主婦の方々の『休日部分』にも充分対応していることです。本部に隣接する旗艦店のロチェスター店を見てください。店の中央に配置しているプロデュース売場では、何百種類もの野菜や果物を揃えていますし、的確な料理をアドバイスできるスタッフを配置しています」

 ウェグマンズは、働きながら学びたいと考えている学生を対象とする奨学金制度も充実させている。

 「このロチェスター店には、州知事もよく昼食に来られるのですよ。彼の奥さまは、当社の奨学金制度を利用して大学を卒業されています」

 なお前述とは違う別の調査では、「アメリカ人が最も好きなスーパーマーケット」にウェグマンズが選ばれている。
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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