第13回 「志を高く、同じ目標に邁進」(アークス 横山清社長)

【週刊粧業2020年3月2日号4面にて掲載】

 アークスの横山清社長は、同社の経営を「八ヶ岳連峰」に例える。一つ一つの山が重なって大きな山を形作るという意味である。

 2019年9月には、宮城県南部で9店を展開する「伊藤チェーン」(本部宮城県柴田郡柴田町、売上高125億円)を経営統合した。これによってグループのスーパーマーケットの事業会社は9社となった。

 「アークスが目標としているのは、各事業会社が、それぞれの地域において30%以上のシェアを維持することです。間接部門や情報部門など、統合してメリットが出せるものについては本部に機能を集中させます。商品でも帳合や仕入の統合を進めています。これに対して販売などについては、それぞれの地域の特徴に合わせて各事業会社が担当しています。屋号や店名なども原則としてそのままです」

 グループの事業会社では、ラルズ(本部札幌市)、ユニバース(本部青森県八戸市)の2社が中心となってグループを牽引しているが、群を抜いて大きくはない。まさしく八ヶ岳連峰なのである。

 ラルズは、損益分岐点を引き下げたローコストオペレーションの「ビッグハウス」、さらにそれを進化させた「スーパーアークス」を主力業態として展開している。これに対してユニバースは、売場面積800坪という大型スーパーマーケットを主力業態として地域での圧倒的シェアを追求している。

 横山さんは1935年、北海道芦別市で鍛冶屋の息子として生まれた。高校を卒業して2年間、芦別炭鉱で炭鉱夫として働いた。働く傍ら勉強に励み、北海道大学水産学部に入学した。

 「当時、『炭鉱夫が北大に合格した』ということで新聞にも出ましたよ(笑い)」。

 横山社長のスーパーマーケット経験は、1961年、札幌市内のスーパーマーケット「ダイマルスーパー」に入社したことで始まる。一介のサラリーマンからの出発である。1985年には同社の社長に就任し、2002年に「福原」(本部帯広市)と経営統合して「アークス」がスタートした。それ以降、アークスはM&Aを繰り返し成長してきた。

 「私は、M&Aを一般的な『マージャー&アクエディション』(合併 買収)ではなく、『マインド&アグリーメント』(志の一致)だと捉えています。アークスグループは、志を高く持ち、同じ目標に向かって邁進する集団なのです。アークスが純粋持株会社として発足してから17年が経過しましたが、グループメンバーは皆、この気持ちを大切にしています」

 2018年12月、アークス、バローホールディングス、リテイルパートナーズの3社は、お互いに資本業務提携して「新日本スーパーマーケット同盟」を発足させた。2019年1月には提携推進委員会がスタートし、傘下に商品、運営、間接部門、次世代領域開発の4分科会が設けられ活動を開始している。

 「この同盟をきっかけとして、スーパーマーケット業界のさらなる再編成を促すことをめざしています」。3社のトップは異口同音にこう語る。

 なおアークスは2019年10月から、ドイツのSAP社と共同開発した念願の新情報基幹システムを本格稼働させた。2020年2月期の業績目標は、売上高5200億円、経常利益164億円を見込んでいる。
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加藤英夫

週刊粧業 顧問(週刊粧業 流通ジャーナル 前会長)

私が週刊粧業の子会社「流通ジャーナル」に入社したのは今からちょうど50年前の昭和44年(1969年)6月だった。この間、国内はもちろんアメリカ・ヨーロッパ・アジアにも頻繁に足を運び、経営トップと膝を交えて語り合ってきた。これまでの国内外の小売経営トップとの交流の中で私なりに感じた彼らの経営に対する真摯な考え方やその生きざまを連載の形で紹介したい。

https://www.syogyo.jp/

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