【週刊粧業2021年3月29日5面にて掲載】
日本の一般メディアでも徐々に聞かれるようになってきたキーワード「Z世代」。1995年以降に生まれた世代を示す言葉であり、これまでとは異なる嗜好を持った消費者層として分析が進められている。今回は中国のZ世代をクチコミから掘り下げてみよう。
中国では2018年ごろから本格的に注目・分析が進められてきたZ世代。中国ではその生まれ年を示す「95後(1995年以降生まれ)」や「00後(2000年以降生まれ)」などという言葉で呼ばれてきたが、現在はZ世代という呼び方が根付いてきた感がある。
そのZ世代は、中国では2.6億人を数え、19年には全家庭消費金額の13%を占めるといわれている。
トレンドExpressが21年1月に発行した「2020年中国化粧品マーケティング白書」では、こうした中国Z世代のウェイボー投稿によるクチコミ調査を実施し、その嗜好を分析した。
まずZ世代のウェイボー投稿で上がった具体的なブランドを見てみる。明確なブランド名に関しては「完美日記(Perfect Diary)」を始め、「花西子」「珂拉琪(COLORKEY)」「卡姿蘭(Carslan)」「毛戈平(MAOGEPING)」などの中国系ブランドの名前が並んでいる。
メークアップを主とする中国ブランドは、データドリブンマーケティングを得意としているが、それによってデジタルネイティブともいわれる中国Z世代の心をつかんでいると考えられる。今後もますます注目度が高まるとみられる。
同時に、注目に値したのが、「KOL」というキーワードが見えなかったことである。代わって非常に多いクチコミ件数となったのが「代言人」や「大使」というキーワードである。
これらは「イメージキャラクター」といった意味合いの言葉で、主に芸能人、歌手や俳優、アイドルといった存在が日本同様、企業と契約し、そのブランドの商品を宣伝するものである。
事実、中国ブランドだけでなく、欧米化粧品ブランドであるロレアルが「欧陽娜娜」、ランコムが「周冬雨」といった、Z世代から支持を集める女優を起用するなど、Z世代を取り込むために代言人活用を進めてきた。
また、コスメ業界では、Z世代に人気のある男性芸能人を起用することも珍しくない。こうしたZ世代を意識した代言人マーケティングが影響していると考えられる。
そもそも中国ではインターネット以前、芸能人の「代言人」がマーケティングの主力であった。
しかし、そうしたブランドの商品が品質問題を起こしたり、代言人自身はその商品を使っていなかったりなどの問題が注目され、代言人そのものの信用が下落。SNSの興隆とともにそうした企業との利害関係がなく使用感を伝えるKOLの信用が高まったという背景があった。
しかし今は、KOLが企業の側に立ち、刈り取りのためのライブを展開している。
そうした状況を見て取ったZ世代は信用の先を代言人に振り戻したのかもしれない。
また、SNSに関しても「小紅書(RED)」は後方にさがり、「B站(ビリビリ動画)」が上位にランクインした。
すでに大学から社会へと進出し、消費の中核をなす中国のZ世代。そのクチコミからは、やはりそれ以前の消費層とは異なる特性が見えてくるのである。