第83回 意外なところにお客様の共通点があった?

【週刊粧業2023年4月3日号4面にて掲載】

 弊社はもともと通信販売の販促物制作がメインの業務だが、お客様のニーズを正確にとらえないと効果的な販促物が作れないので、創業時から積極的にお客様調査もお手伝いしてきた。特にお客様のグループインタビューは、得意先からの評価が高い。

 弊社のグループインタビューは、RFM分析表に基づいて、ロイヤル客、ライト客、離脱客などの分類でグループ区分をして行うことが多い。これに年代別、商材別等の区分も加えると、一つのブランドでも幾つものグループのインタビューを行うことになる。これを得意先の社数分だけ実施することになるので(数年おきに実施する会社もある)、これまでにかなりの数を実施している。私はファシリティターを担当することが多いので、多くの化粧品会社のお客様と対面でお話を聞いてきた。

 そんな中、会社やブランドが代わっても同じような傾向がみられることに気が付いた。今回はそんなお客様の“共通点”をお知らせしたい。

 まずどんな会社のお客様でも、ロイヤル客のグループはお客様同士がすぐに親しくなる。席に着くなり会話を始めたり、展示している化粧品の評価を始めたり。もちろんインタビュー中も和気あいあいと話が弾む。情報交換が行き過ぎて、その場で他社商品を教え合ったりもする。

 ある会社のグループインタビューでは、終了時に参加者がラインのアドレス交換をして、その後もお友達としてお付き合いを始めたと聞いた。より親しくなるのは、市場シェアの小さいブランドだ。

 お客様曰く「わざわざ見つけたブランドなので、親近感がわく」や「同じブランドを使っている安心感で、思いっきり化粧品の話ができる」らしい。確かにブランドのペルソナを設定しているので、同じような価値観を持つ人が集まるのは、当然と言えば当然だ。

 ある人気の美容家が経営している化粧品ブランドのロイヤル客は、「〇〇さんみたいになりたい人」が集まってくるため、お手入れ方法はもちろん個人の持ち物まで真似したがる。そんな超ブランドでなくとも、長くご愛用いただいているお客様は、その会社の古参社員とどこか共通点があると、ある会社の社長様が言っていた。

 また、離脱客はこちらが思っているほど「離脱」していない。例えば、直近1~2年間発注がないと企業側は「離脱客」というリストに入れてしまいがちだが、商品が肌に合わなかったりサービスが嫌だったりという理由でもない限り、お客様たちは「離脱した」とは認識していない。

 お客様曰く「今は他社の商品をお試しで使用しているので、そちらが合わなかったら元に戻したい」とか、「もう少し大人になってお金にゆとりが出来たら使いたい」など、「今はたまたまお休みしているだけ」という感覚だ。そういう離脱客が多いのは、商品力が高くサービスも充実している会社だ。

 ところが価格の大幅割引で売っている会社のお客様は、一定の傾向がみられない。共通しているのは「お得だったから」なので、ロイヤル客には属さないし、初回50%割引などで定期購入したお客様がライト客として存在してはいるが、共通項はあまり見当たらない。またこんなお客様層は、グループインタビューへの参加応募者も少ないし、ドタキャン率も高い。

 会社やブランドが異なっても、同じような傾向がみられるのは不思議だが、お客様は会社側が行っている販促やお手入れの情報提供などを反映する「合わせ鏡」だ。もう一度お客様の声をしっかり聴いて見直したい。
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鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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