第84回 ブランドコンセプトとは何か?

【週刊粧業2023年5月22日号11面にて掲載】

 弊社は通販化粧品会社様の販促企画をサポートする会社なので、時々得意先様を対象に、セミナーを開催させていただいている。コロナ禍では控えていたが、昨年の秋から少しずつ再開している。今回はそのセミナーの中で、ミニワークショップを取り入れてみた。座学で話を聞くより受講者自ら参加するセミナーの方が面白いのではないかと考えたためだ。確かにワークショップを取り入れると少し緊張するためか、座学の内容理解が格段に深まったような気がする。

 今回のテーマは2つ。1つ目は「あなたの商品のお客様はどんな人ですか? ペルソナ像を解説してください。そしてそのペルソナのニーズは何ですか?」、2つ目は「あなたのブランドのコンセプトは何ですか? お客様に約束していることはどんなことですか?」で、この2つのテーマを短い言葉で回答欄に3分程度でまとめてもらった。

 私としては、すでに通販化粧品を事業展開している会社の方々ばかりであり、端的な言葉で記載するだけだったので、短時間でまとめられると考えていた。ところが参加した人の中には意外なことに苦戦している姿もみられた。ミニワークショップの前に、「ペルソナとは何か?」や「コンセプトとは何か?」というようなモデルケースとなる事例を沢山お話ししたために、気後れしてしまったのかもしれない……。

 おそらくどこの事業会社様でも、ペルソナ像やコンセプト、キーワードなどを決めているに違いない。ただしどんな立場の社員でも、どんな場面で問われても即座に回答できるのが、定着しているお客様イメージであり、主張するコンセプトなのではないだろうか。改めて「なんだったかな?」と考えるようでは、本気でペルソナ像やコンセプトに向き合っているとは思えない。

 そして運営している側が「自社ブランドの特徴や価値」を信じていないのにお客様が信じるはずがない。できればブランドに関わる全社員が、同じ想いを共有していることが必須条件なのではないかと思う。単なるビジネスとして収益を上げるためだけだったら、どんな手法でも成り立つかもしれない。

 ただしそれは「ブランド」とは言えない。まず自分たちがその価値を信じ、お客様にも賛同してもらって、より多くの人に「価値の輪」を広げていくこと。これが「ブランド価値」を拡散するということだ。

 そのためには他人と同じ主張では意味をなさない。自分たちは他社と何が違うのか、その差を明確に表現しなければならない。その差異性こそが主張であり、提案であり「想い」だ。コンセプトやお客様への約束は、その差をアピールするための手段。どこにでもあるような言葉や、多くの会社が提唱しているような差が明確でないものは、コンセプトとは言えない。ところが現在はあまりに似たような主張があふれていて、あまり差異性が目立たない。収益を真っ先に考えるようでは、「想い」は陰に隠れてしまう。

 つまりお客様に真に支持されるためには、他社とは明らかに差のある「想い」を明確にして、ブランドに関わる全員がいつでも「どんなお客様に、何を提供するのかを端的に語れる」ことが必要なのではないか?
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鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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