第90回 お客様が知りたい“価値ある”情報発信を

【週刊粧業2023年11月13日号10面にて掲載】

 どこかで買い物をしたり、何らかのサービスを利用して会員登録をすると、メールマガジンが頻繁に送られてくるようになるのは、誰でも経験していると思う。仕事柄、業界やジャンルは違っても、なるべく目を通すようにしているが、忙しいときに何度も配信されてきたり、こちらの都合を無視した一方的な内容だったりすると、ついイラッとして「削除」してしまうこともある。

 本来、メールマガジンやニュースレターなどでの情報発信は、既存顧客のロイヤルティを高めるためのものであると思うが、それがきっかけでお客様を不快にさせてしまったり、ブランドイメージを損ねてしまったりするのは本末転倒だ。

 最近は、ニュースレターやメールマガジンは手間がかかる割に成果が見えにくいという理由で、制作や配信を取りやめる企業も多いようだ。しかし玉石混交の情報が飛び交う現代だからこそ、他社とは一味違う信頼のおける情報を発信することで、お客様との距離をもっと近づけられるのではないか。

 情報発信で最も大切なことは、「お客様を知る」こと。自分たちのお客様は、いったいどんな人たちで、どんなことに興味を持ち、何を知りたいと思う人たちなのか? 日々の業務で蓄積される定量・定性調査の分析結果やヒアリングデータを基に、よりリアルにイメージしておくことがポイントだ。

 次に、「有益な情報を届ける」こと。前述したような、成果が見出せないというニュースレターやメルマガは、往々にして企業目線の一方的な“売り込み要素が強い”場合が多い。新商品の案内、季節商品の案内、セール品の案内などは、お知らせしなければならない大切な情報ではあるが、企業側の勝手な押し付けにならないように、お客様目線で「積極的に知りたいと思う有益な情報に編集し直して」届けなければならない。

 そもそも企業側の都合で届けた情報は「お客様には読んでもらえない」ことを前提に、「どうしたら読んでもらえるか」という視点で工夫すべきだ。情報を届ける向こう側にいるのは、買い物をしてもらう顧客ではなく、自ら情報を読む「読者」なのだ。“売りたい”という企業側の思惑が前面に出ていては敬遠されてしまう。それよりも「読者を楽しませよう」とするサービス精神が、読んでもらえることになり遠回りでも最後には実を結ぶのだ。

 また、情報発信は「継続して届ける」こと。商品やキャンペーン情報は、お客様が知りたいときに自ら検索して収集することができる。ニュースレターやメルマガならではの「お楽しみ情報」を発信してこそ成果が生まれるのである。それもスタートしたら継続して発信することが求められる。

 例えば化粧品通販ならば、お客様の声を紹介する、顧客(読者)層の価値観に寄せた内容にするなど、顧客(読者)参加型のコンテンツで双方向性をもたせることで、お客様を飽きさせない厚みのある内容に仕上げられるはずだ。

 一見、ハードルが高いことのように感じられるかもしれないが、ブランドコンセプトなどの商品戦略やターゲット層などの顧客戦略が合致してさえいれば、それほど難しいことではない。お客様に情報を発信する方法は、ニュースレターやメルマガ以外にも、会報誌やDMなど様々あるが、大切なのは、世の中の動きに合わせて日々変化を取り入れながら、一貫して自社のポリシーやブランドの価値を伝え続けることである。

 継続して発信することに意味があり、継続することで価値がアップするものだと思う。“欲しい”“知りたい”と思う情報をいつでも届けてくれるブランドに、お客様は必ず信頼を寄せファンになってくれるはずだ。
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鯉渕登志子

(株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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