「ウチは勝負をかける会社じゃない。自分でもう、わきまえているから」と語るのは、化粧品受託製造業(化粧品OEM)を展開するポイントピュール(沖縄県島尻郡久米島町)の大道敦社長。
会社立ち上げから10年目と聞けば"一気呵成に"と考えるのが一般的な経営者感覚といえそうだが、同社長に生き馬の目を抜くといった風情は見えない。
業績を伸ばそうという意欲に代え、現在の自分を駆り立てる意識に「多少は面白いブランドを出したい」という考えがあり、このほど1日に1500個しか生産できないという「生石鹸」の受注を開始した。
「少しは反響があるね」として生石鹸の出足に期待を高める一方、反面で「こればかり注文が来ても困る。細かい仕事だから」と語り、効率性や採算性といった言葉を置き忘れたように笑った。
また、多くの受託製造業者が商談の機会損失を無くそうと大都市圏にオフィスを構える傾向を横目に、同社は沖縄の離島から全国の顧客をカバーしている。前期、営業マンでもある大道社長は「飛行機の利用回数が150回を越えた」といい、不便さが苦になっている様子がない。
商談のパターンは、まず同社長が相手先へ訪問して発注側の要望を聞き込み、まとまった処方を確認する段階で久米島を訪れたメーカーが生産環境に魅了され、不便さが優位性に昇華するといった流れを生んでいるようだ。
さらに、OEM事業で収益を高める少品種大量生産には欲求が薄く、大量に作り込むより「少ない数量でいいから、面白い商品を作りたい」と力を込める。主義の反映として「大量に売れることよりも個性的(な化粧品)であることを追求したから、なんとか55社のお取引先があるのかもしれない」という自己診断もして見せた。
流行よりも個性を追い掛けるのは理由がある。郷土愛よろしく沖縄県が持つ化粧品素材を普及・拡大させ、旗色が悪い健食メーカーの消費をカバーしたいと意気込む。
この記事は週刊粧業 掲載
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