週刊粧業
創業から80年に迫ろうという古参石けんOEMの若き経営トップとして、2009年8月に新社長に就任した。
当時は先代が将来を見据えて仕掛けた積極な設備投資の後で、新たなリーダーの双肩にかかる多大な重圧を周囲が心配げに見守ったと、のちに同社の経営陣が回想していた。
以降、この時に周りが投げ掛けた気遣いが無用だったことは、奥中氏自身がその後の経営手腕と業績推移で立証して見せた。
ところが、昨春に「茶のしずく石鹸」による消費者問題がマーケットに強い揺さぶりをかけ、歴代の社長が乗り越えて来た難局とは違った趣旨の経営課題に直面している。
時に「黒衣」と称されることがある受託製造事業者だが、ここは現状に手をこまねいているわけにもいかず、不測の要因でイメージダウンした洗顔石けんの復権に向け「大きくて明確なマーケットトレンドを作り出すため、(当社が)やるべき位置に居るという自覚を持たなければいけない」と言い切る。
一方で、悠香(福岡県大野城市)が牽引した石けん商材へのシャワー効果を冷静に認めている。外部から受けたという指摘「石けんはいままでがお祭り騒ぎだったのでは?」に対し、「そう。良過ぎた」と持論を語った。
石けん人気の復活をにらみ、幸い、呉越同舟よろしく競合や販売先に「横でタッグを組める頼もしい顔触れがそろっている。年齢だって近い」という人脈が整っていることから、先の“明確なマーケットトレンド”が絵空事でないとわかる。
今後にかけ、洗顔石けんに係わる事業者が横一線「皆で何かを担いで人気を起こし、そこから先は各社が営業力で勝負したらいい」という構想は、他業者の賛同を得られそうな響きをたたえている。
洗顔石けんの歴史変遷を考えると、「ずっと長くギフト需要が支えた」のち、「これが廃れて単品化が進んだ背景」がある。一過性で終わらせないため、次世代経営者らの結束力に期待がかかる。
この記事は週刊粧業 掲載
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