今、3・11東日本大震災当時を振り返ると、地震、津波、原発とこれだけ大きな被害をもたらした震災だったにもかかわらず、業界の立ち直りは早かったのではないでしょうか。
なぜなら、お客様にとって、日用品業界の商品はかけがえのない商品だったからです。現代は、コンビニで何でも買うことができます。こうした豊かな生活が震災で瞬く間に崩れ、欲しいモノがすぐに買えなくなってしまいました。シャンプーで頭を洗ったり、歯を磨いたり、顔を洗ったりなど普段の何気ないことができなくなった時、初めて商品の必要性に気づかされます。
そのため、被災地の方が普通の生活を取り戻せるように、私どもも義援物資の支援を行いましたが、同時に、通常のインフラを通じて商品を滞りなく届けることが企業の使命であると考え行動しました。やはり、最も大切なのは「普通にモノが買えること」です。つまり、店頭を通じて、きちんと商品をお渡しすることが大切であり、メーカー、卸、小売店各社が一体となり、商品の供給に努めました。
こうした背景から、業界各社の努力、政府の協力もあり早く対処することができたのではないかと思います。
震災直後は東北道が寸断され商品の供給が危ぶまれました。運よく当社は西日本に工場を、米原には倉庫を持っていたため敦賀港から船で新潟県に入り、東北への配送ルートを確保できました。
この方法は、お取引先様や社員皆の力を借りて何とか実現できましたが、今後サプライチェーンが断絶されるなど緊急時の対策を講じていく必要があるでしょう。
オーラルケアから全身の健康考えた
「マウス&ボディ」の啓発進める
サンスターの商品は、お客様は普段それほど重要性を意識していないと思いますが、いざハブラシやハミガキがなくなって、1日歯を磨けなくなったら、不快に感じるでしょう。しかし、不快に感じるだけならまだ良いのです。
と言うのも、お口の中が不衛生だと、全身に悪影響を及ぼす心配もあるからです。誤嚥性肺炎や風邪を引き起こし、糖尿病や心臓疾患をお持ちの方は、症状をさらに悪化させる恐れがあります。お口を清潔に保つことと全身の疾患はあらゆる面で関係していることが研究で明らかになりつつありますので、私たちも率先して糖尿病と歯周病ケア、がん患者さんのオーラルケアなどにお役に立てる商品の開発に向け、日々研究しています。今後も皆さんが健康的に過ごせるような生活提案をしていきたいと考えています。
被災地の方も同じです。普通の生活、健康的な生活を送れるように環境を整備することが重要です。
現在、「絆」の言葉のもと全世界の人々が復興支援などに取り組んでいます。「絆」を掲げる以上、私たちサンスター社員もその一員として行動を起こし、同じ人として、協力することが大切です。
大きな懸念事項となっている放射能問題については、当社が以前から岡山大学と共同で「ナノバブル」技術の研究を進めており、この技術が応用できないかと考えています。
ナノバブルは目に見えない非常に細かい気泡で、これらの多数の気泡により様々な洗浄に応用できることが期待されています。研究の過程で、この能力が放射線の除染に活かせないかと考え、京都大学と研究しながら被災地での除染作業への貢献を模索しています。
実際、ナノバブル水を使用して除染作業をすると、通常の水で洗浄するよりも約20%ほど除染効果が高まるという実験結果も出ています。現在、現地における除染方法の確立に向け検討を進めているところです。
また、被災された方に限らず、お口と全身の健康について、啓発に努めていきます。オーラルケアと体の健康の因果関係を理解し、オーラルケアの重要性を意識していただきたい。
例えば、糖尿病患者向けのWebコンテンツの「糖尿病とうまくつきあう」を先日開設し、多くの患者さんのコミュニティの場として活用していただいております。また、がん患者さんについては、手術の前後に歯科医師によるオーラルケアを実施することで、患者さんの入院日数が減少することがわかってきています。これらは、各分野の先生と協力し合ってわかってきたことです。ようやく医科・歯科連携のスタートラインに立つことができ、当社としてもその連携に協力できないかと、様々な事項について検討を重ねています。
また、新しい取り組みの一つとして、当社では3、6、9、12月にある「防災用品点検の日」を活用し、6月は、防災グッズにオーラルケア用品も加えていただけるよう情報発信をしながら、オーラルケア用品を入れる防災袋を販促ツールとして用意する予定です。
いざという時の準備に、オーラルケア用品の重要性を認識していただける機会になればと考えています。
震災から1年が経ちました。これからも企業として、元通りの生活の実現に向けて努力を続けていきます。それには身体面だけでなく、精神的にも元気になってほしいという想いから、「大声大会」「ファミリーミュージカル」など直接、被災地のお子様やご家族に向けたイベントも実施してきました。ご来場いただいた方々には、イベントの途中、涙ぐむ方もいらっしゃいましたが、最後には、本当にステキな笑顔でお帰りになる姿を見ると胸が熱くなります。
このような方々に、どれだけ企業が力になれるか。1社では微力ですが、それでも普段の生活に戻れるように協力し合うことが、震災の記憶を風化させないことに繋がるのではないでしょうか。
この記事は週刊粧業 掲載
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