沛滢生物科技（上海）有限公司・周昭呈董事長インタビュー

KOLマーケティングで成長拡大、

スキンケアブランドへの挑戦も

　――近年、注力している取り組みをお聞かせください。

　周　AIやIoTがどんどん進化し、ネット上で生活者一人ひとりの興味に合った広告が提示されるようになり、より手軽に効率よく消費活動ができる環境が整った。特に、17年頃からはSNS上でKOL（Key Opinion Leader）の影響力が急速に高まっている。

　生活者は、KOLを通して、より新しい情報やより専門的な情報を得ながら消費活動を行うようになっている。従来の広告・宣伝だけに頼らず、KOLを活用したマーケティングに取り組む必要性がある。

　当社も昨年より本格的に取り組みはじめ、ターゲットと重なる若者に人気のKOLに広告投資を行っている。

　――様々な販売チャネルで「Dr.JOU（森田薬粧）」などのブランドから次々とヒット商品を生み出しています。どのように製品開発を進めていますか。

　周　例えば、チェーンストアのようなリアル店舗では、売場の鮮度を維持するため商品サイクルが短い。そのため常に新たな提案ができるように様々な製品を準備しておくようにしている。

　さらに、それら商品は一つひとつオリジナリティが感じられるものでなければならない。当社では、小売店のバイヤーから顧客層や売れ筋、トレンドなどについて意見交換し、企画開発に活かしている。

　中国市場では、ミレニアル世代にいかに受け入れられる商品を生み出せるかが重要である。

　特に、95年以降に生まれた後期ミレニアル世代は、自身の好き嫌いよりも流行やトレンドを重視する傾向が見られ、他の世代に比べて商品への執着心がそれほど強くない。ひとりっ子で不自由なく育ち、将来への不安もないといった生活環境も影響していると思われるが、人気がある商品であれば、値段もそれほど気にせず購入する傾向が見られる。

　そうしたミレニアル世代の多様なニーズを迅速に的確に捉え、製品開発に活かさなければならない。特にシートマスクに関しては、お気に入りを使い続ける傾向がある日本人女性とは異なり、中国人女性はファッション感覚で次々に新しいものに興味を持ちやすく、値段も手頃なのでギフト需要も高い。

　そのため、販売してすぐに顧客の反応が得られ、売上を商品評価として見ることができる。初動が良ければ、さらに投資を上積みし、反応が薄ければ、すぐに新たなものに変更する。その繰り返しで、現地の消費者の心を掴み続けることが大切である。そのためにも、意思決定を素早く行い、企画開発から商品化までの期間をいかに短縮できるか。近年は品質とともに、そのスピード感を特に重視している。

　その実現に向け、私自身は頻繁に若者と食事をするなど交流をもつ機会を増やしている。若者たちの間で今、何が流行っているのかをリアルタイムでキャッチし、すぐに商品やサービスに落とし込んでいくのが狙いである。

　その取り組み成果として、今年の夏に中国の文化財をモチーフにした限定デザインのシートマスクシリーズを展開する予定だ。現在、中国では、若者に中国の伝統や文化への理解を深める取り組みを国家プロジェクトとして推進している。その中で、博物館が中国文化財を紹介するPRにKOLを活用し、それが若者に大人気なのだ。

　「Dr.JOU」は、ヒアルロン酸配合のシートマスクとして中身の品質に関して高いクチコミ評価を得ているが、多くの若者が使用するきっかけは、パッケージのデザイン性が重要である。今回の博物館の限定パッケージのように、今後も若者のトレンドを素早く掴んで商品化に結びつけていくことでブランドを醸成させていく。

　――今後の成長戦略についてお聞かせください。

　周　時代や社会がどんなに変化しても、変わらない価値がある。それはブランドの「品質」「信頼」である。　

　その変わらない価値を担保とした上で、シートマスク以外の化粧品の開発・販売にも本格的に注力していく。

　シートマスクカテゴリーでは、中国市場でトップブランドの仲間入りを果たせたと自負している。そういった意味では、企業として新たな成長フェーズを迎えている。

　当面は、シートマスク以外の基礎化粧品の売上構成比を全体の10％まで引き上げることを目標に取り組む。その過程において、スキンケアの開発技術力が優れている日本のOEM会社と一緒に取り組んでいきたいという思いもある。

　日本企業にとって中国市場は大きなチャンスが広がっているが、現地では言葉が一つの壁になっているのではないかとも感じている。当社の中国販路と、北京語という共通言語を持つ台湾の販売・コミュニケーション力を、日本の技術力と連携させることで、ともに成長できる形を見出していきたい。