阪本薬品工業、保湿剤の分子レベルでの角層構造への影響で新知見

週刊粧業 2020年7月13日号 55ページ

阪本薬品工業、保湿剤の分子レベルでの角層構造への影響で新知見
 天然グリセリンの国内トップメーカーとして知られる阪本薬品工業は、肌の保湿で重要な皮膚角層の機構解明に取り組んでいる。

 汎用の保湿剤であるグリセリンとジグリセリンを組み合せた化粧水を塗布した肌では、角層の水分を長時間保持することが確認されているが、その作用機構は明らかになっていない。

 肌の最外層に位置する角層は、死細胞の角層細胞とその周囲をラメラ構造の細胞間脂質が取り囲む状態で構成され、肌の水分を保持する役割を担っている。

 同社では今回、名古屋産業科学研究所の八田一郎氏の協力のもと、大型放射光施設「SPring₋8」のX線回析装置を用いてヒト皮膚角層を測定し、得られたX線散乱プロファイルに対して解析を行い、保湿剤の分子レベルでの角層構造への影響に関する情報を得ることに成功した。

 角層中の水分の大部分が蓄えられている角層細胞では、角層の乾燥処理により角層細胞中のケラチンタンパクの構造が収縮し、水が失われることを確認した。

 さらに、細胞間脂質のラメラ構造への影響を詳細に解析したところ、細胞間脂質の構造は乾燥環境下において規則性を保つことで水を保持しようとするが、過度の乾燥においては構造が乱れることがわかった。

 その結果、グリセリンが角層細胞中の水を保持し、さらにジグリセリンが細胞間脂質の構造を安定化することを発見した。

 これまで、グリセリンとジグリセリンの組み合せにより角層水分を長時間保持することが確認されていたが、今回、角層中のタンパクや脂質に対しての作用やその役割が明らかとなったことで、従来よりも保湿効果の高い原料開発や、皮膚科学技術の確立が期待される。

 同社は今後もグリセリンの基礎研究をベースとした、ポリグリセリン脂肪酸エステル系の界面活性剤や油剤などの特長原料の機能に関する応用技術の開発を進めていくほか、新たな処方開発が可能となる「アプリケーション・ラボ」の年内開設に向け取り組んでいく。
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