花王、枯草菌によるタンパク質生産技術を感染症対策に応用

粧業日報 2020年10月30日号 2ページ

カンタンに言うと

  • 新型コロナウイルス中和能を持つVHH抗体などの大量生産へ
花王、枯草菌によるタンパク質生産技術を感染症対策に応用
 花王生物科学研究所はこのほど、枯草菌によるタンパク質生産技術の感染症対策への応用のための研究を開始した。

 同社は、30年以上にわたりタンパク質の研究開発を行う中、酵素などのタンパク質の枯草菌による生産技術を開発してきたが、その技術を、抗体など感染症対策に役立つタンパク質の生産に応用する。

 一部の枯草菌は、タンパク質を高効率に分泌する性質を持っており、この性質を利用すると、目的とするタンパク質の設計図となる遺伝子を枯草菌に導入して安定的に保持させることで、菌に目的のタンパク質を分泌生産させることができるという。

 今後は、新型コロナウイルス中和能を持つVHH抗体や、「顧みられない熱帯病」の1つである土壌伝播寄生虫症(STH)の治療薬への応用が期待されているタンパク質の大量生産技術の開発につなげていく。

 同社の枯草菌によるタンパク質生産技術は、2020年5月に発表された、北里大学、Epsilon Molecular Engineering(EME)との共同研究による新型コロナウイルス中和能を持つVHH抗体取得にも貢献している。

 複数タイプの候補VHH抗体を迅速かつ評価に十分な量を生産できることは、今回の枯草菌を用いた生産技術の大きな利点の1つと考えられ、VHH抗体の大量生産技術の開発にも取り組んでいく。

 また、同技術の持つ幅広いタイプのVHH抗体を生産できるという特徴から、今後新たに出現するウイルスの脅威に際しても、迅速に対応できる抗体スクリーニング系として活用していく。

 腸内寄生虫を駆除するタンパク質の研究では、花王とPATH(国際非営利団体の1つ)、マサチューセッツ大学医学部(UMMS)の共同プロジェクトが、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の「マラリア、顧みられない熱帯病の新薬開発」案件として採択され、今年10月からスタートしている。

 UMMSの提案に基づいて多数の改変Cry5Bを枯草菌で生産し、評価に提供することで、STHの新薬開発のさらなる進展に貢献することが期待される。

 同社は、枯草菌によるタンパク質生産技術の強みを活かし、感染症対策をはじめとする社会課題の解決に広く貢献していく。
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