被災者の当たり前の幸せを取り戻そう(サンスター濱田和生社長・当時)

週刊粧業

カンタンに言うと

被災者の当たり前の幸せを取り戻そう(サンスター濱田和生社長・当時)

 被災地の方は、皆、私たちのお客様です。お客様の災難に対し、私たちは企業として何をすべきでしょうか。義援金や物資の援助は当然です。しかし、その先には何ができるでしょう。

 阪神大震災当時、私は広島支店長でした。実家が神戸にあったので、急いで駆け付けそこで惨状を目の当たりにしました。実家は半壊状態でした。その経験上、被災した方が欲しいと思うモノには順番があります。

 その第一となるのが食べ物です。次に上下水道。そしてその次が手を洗ったり、口を洗うなどの衛生面です。最後がプライバシーです。

 私たちができるのは、その次のステップの健康・予防です。特に注意して頂きたいのは、歯が磨けないことで、口の中のバイ菌がそのまま体内に入ってしまって、誤嚥(ゴエン)性肺炎になることです。

 また、避難所は子どものオーラルケアをしっかりできる環境がなく、しかも、配給されているケア用品は大人用ばかりです。これからもまだまだ物資の支援は続けていかなければなりませんし、行政や歯科医師会などと相談しながら、サンスター財団が行っている歯科検診を含めたオーラルケアの指導ができないかと考えております。

 そして子どもたちには、楽しく歯を磨けるようにアドバイスもしていきたいと考えております。お年寄りや子ども、妊産婦の方は特に、オーラルケアの問題が身体全体に影響を及ぼさないようにしっかり支援していきます。

 ただ、ハブラシやハミガキだけではなく、生活必需品が揃わなければなりません。各工業会を通じ日用品メーカーは、まず生活関連物資の立て直しから行うべきでしょう。朝起きたら顔を洗い、歯を磨き、頭を洗い、トイレに行き……。当たり前のことができると、人は落ち着くことができます。当たり前ができるほど、幸せなことはないのです。

 今回の震災に関して、私が特に思ったのは「全ては皆繋がっている」。1社だけでは商品は完成しません。原料・容器があり、社員がいて、物流が整って、初めて商品ができる。そして店頭があり、お客様に買って頂いて、初めて循環します。これは未来永劫そうなのだな、とよく分かりました。企業は、企業にとっての「当たり前」の有り難さを、ここで思い出すことになったのではないでしょうか。

 これから被災者の方は「自分探しの旅」が始まると思います。故郷がなく、友達や親せきが亡くなり、自分の過去が、生きた証がなくなったと思う方がいるかもしれません。

 私も神戸で被災した時、実家に幼い時の写真を沢山保管していましたが、それが全部がれきとともに消えた時、とても悲しかった。実家は永遠にあるものと考えていましたから。この寂しさは割り切ることは難しいと思います。

 しかし一方では、「不謹慎だから」と、冗談も言わなくなるようにはなってほしくありません。こういう時は、無理やりにでも笑って前を向いて生きてほしいと思います。私たち企業ができることは、生きている方が二次災害や健康被害にならないように守ることです。私たちの商品を買って、ファンになって頂いたお客様へ「恩返し」をする時が今なのです。

 阪神大震災は1995年で終わったわけではありません。それと同じように、東日本大地震も2011年3月11日で終わりません。その年1年間だけではなく、継続支援が必要です。長く援助していくことが大切です。今を生きる人々に、この災害を忘れさせてはいけません。3年後、5年後の東北を楽しみにして待つのです。

ホーム > 化粧品業界人必読!週刊粧業オンライン > 被災者の当たり前の幸せを取り戻そう(サンスター濱田和生社長・当時)

ライブラリ・無料
ダウンロードコーナー

刊行物紹介

定期購読はこちら
お仕事紹介ナビ

アクセスランキング

  • 日間
  • 週間
  • 月間
PDF版 ダウンロード販売
化粧品マーケティング情報
調査レポート
株式会社矢野経済研究所
pagetop