【化粧品原料】機能訴求と価値提案でさらなるレベルアップへ

週刊粧業 2012年12月3日号 1ページ

カンタンに言うと

【化粧品原料】機能訴求と価値提案でさらなるレベルアップへ

 週刊粧業の注力特集「化粧品原材料〈冬季〉」がまとまった。販売の前線でメーカー各社による顧客獲得競争が過熱する様子を反映し、末端製品の骨格に大きな影響力を秘めた原材料の市場でも機能性や安全性でしのぎを削る実態が浮かび上がっている。

 本特集で取材協力を得た34社のメーカー・商社の状況から一貫した傾向を探すと、愛用者の使用感を満たす責任を負ったメーカーへ提示するエビデンスの追求が活発化しているほか、トレンドの自然派志向はいまや定番化したと見ることもできる。

 一方で、「間口」という視点では各社の構えが二極化している。商社・メーカーを問わず手広さをセールスポイントにする企業勢がある一方で、一点集中型で絞り込みを身上とする事業者も少なくない。来春に迫った化粧品技術者の祭典「CITE Japan」への下準備にも照らし、有力各社の商況を追ってみた。

ハード面の整備に積極性、足元強化に海外と両面で

 事業者に見る「攻めの姿勢」を計る指標の一つを設備投資だと仮定した場合、一部の企業が先を見据えた積極的な動きで競争力を高めている。

 高級アルコール工業はコスト競争力を研鑽するため、設備のリニューアルを進めている。2011年に少量多品種化に向け新製造棟を建設・稼働したのに続き、今後は疲弊が懸念される旧式な製造設備の入れ替えを行う。

 根幹のライン強化という部分では、7月に堺化学工業が福島県いわき市の工場で生産能力を従来比2.5倍の500トンへ拡大し、被災地への活力注入ともいえる積極投資で企業力をアピールした。

 また、研光通商は好調な売上推移を原資に拠点拡充を進め、この11月には重点エリアと見なす福岡に国内3カ所目の事業所を新設して顧客との距離感を縮めた。

 さらに、海外へ布石を打つ局面では日清オイリオグループが2011年に子会社化したスペインIQL社との間でシナジー創出を目前に見ているほか、味の素が好況に湧くインドネシアで来期に現地工場を稼働させる動きや、先乗り組では不二化成が2011年までに中国に2工場を設けて当地事業を前に進めている。

今や根張った自然派志向
新規性の有望素材各社に

 前回〈夏季〉(6月4日号)までに化粧品原材料のトレンドで自然派・ナチュラル志向が色濃さを増していた傾向に続き、今回はそうした中へ新規性を掲げた素材が割って入る格好になった。

 一丸ファルコスはサトウカエデの樹液による水溶性基剤「メープルウォーター」を開発して保湿訴求に新しい方向性を示し、ティーエストレーディングは来春の「CITE Japan」で数点の新原料を披露目することを明らかにしている。

 また、日本精化は発売から間もない高分子シリコーン代替ポリエステル「LUSPLAN SR―DM4」と、毛髪結合脂質ナノカプセル「NanoRepair―CMC」の提案を進めている。

 さらに、JTSは京都大学発ベンチャーのナールスコーポレーションが手がけるアンチエイジング原料「ナールスゲン(GGsTop)」の取り扱いを開始し、コラーゲンやエラスチンの産生能を促進する素材として拡販を行っている。

 海外の力を活かす部分に目を転じると、東振化学が仏CRMインターナショナルの「オリーブ由来成分」の取り扱いを開始し、ユニークな感触や有効性評価のほか産地特性を売り物に新規ユーザーの開拓を進めている。

 「新しさ」を掲げた新素材が賑わいを見せた一方、訴求ターゲットでは市場の関心が増す「抗糖化」に照準を合わせた原材料が少なくなかった。

 寿ケミカルは、天然由来成分の展開に軸足を置く中、伊東泰通社長が「強力な抗糖化作用を示す新規活性成分の共同開発に取り組んでいる」と明らかにしている。

 また、丸善製薬も「ウメ」や「ユキノシタ」といった得意の国産植物原料シリーズで抗糖化とともに美白作用を打ち出すなど多機能性で顧客へ提案している。

 ドル箱を形成したアンチエイジング領域の中で今後、「抗糖化」は「美白」や「抗シワ」に続く台風の目になりそうだ。


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