日本コルマー、「高リピート」につながる化粧品づくりへの挑戦

粧業日報 2016年5月19日号 2ページ

カンタンに言うと

日本コルマー、「高リピート」につながる化粧品づくりへの挑戦
機能性成分の配合量などで
欧米企業との意識格差是正も

 ――「新しさ」を感じるには、その裏づけとなるエビデンスデータも重要な役割を担うと考えます。近年は受託評価試験にも取り組まれていますが、顧客の評価試験およびエビデンスデータに関する要望はいかがですか。

 西浦 試験を行うタイミングは顧客によって様々だが、顧客が納得する処方が完成してから実施することが多い。試験の結果をもとに、商品のコンセプトや販促のキーワードを導き出すことができるからだ。その際、販売チャネルや実際に使われるシーンを考慮した上で試験を行うために、顧客との事前の打ち合わせは必須となる。

 最近は、新規参入を目指す企業を中心に、異業種で使われている素材を化粧品用途に使いたいといった依頼や、輸入原料から美容効果を見出して欲しいといった要望が増え、素材の機能性を見出すことから一緒に取り組む機会も増えている。

 また、中国や東南アジアなど海外での販売を計画している製品の試験依頼もここ数年で急増している。グローバルに展開するブランドでは、それを展開する国や地域の気候条件なども踏まえた試験データでなければ全く価値がないものになる。

 試験で顧客の期待に応えられる結果が得られればベストだが、当然、難しい場合もある。

 その際、様々な試験方法を代用して、商品のコンセプトになるような特徴的な美容効果を見出せるかどうか。そして、そのデータをどのような形で提供するかどうか。ここには各社の独自性が表れてくるはずだ。

 田中 そうした技術やノウハウは、欧米を中心としたグローバルブランドとの取引を増やしながら、積み重ねてきた。欧米企業のエビデンスデータに対する要求は、日本企業以上に厳しい。

 例えば、日本企業の中には、成分の品目数を差別化ポイントとし、各成分で効果が期待できる量を配合するかどうかは二の次になる企画案も正直少なくない。しかしながら、欧米企業はそうした販売戦略を理解できないと首を横に振る。

 彼らはエビデンスが得られた推奨濃度だからこそ、配合する価値があると主張する。そのため、評価方法などのチェックも厳しい。これを世界的な流れと捉え、根拠のある濃度での配合を提案していく意識を強めている。

 東野 それは「数字のマジック」のようなもので、高いPR効果を生むことは確かだ。防腐剤など肌に悪いイメージがある成分を使わないという「フリー処方」もその一つだろう。マス広告を打てるほどの体力を持たない中小企業にとっては、消費者の興味を惹きつける有効な戦略と言えるが、重要なのは証明できる根拠データを自社で持っているかどうかだ。

 また、ある販売チャネルでは受け入れられなかった製品が、別のチャネルではヒットしたという例はいくつもある。ブログやSNSなどで消費者自身が情報を発信できるようになったことで、単にマス広告を打てば売れる時代でもなくなっている。そうした情報提供も含め、必要とあれば、社内教育やコールセンターの講習会などを開催し、商品の特長を詳しく説明する講師役を務めるサポートも増えている。

 西浦 特にリニューアル時には、従来品との比較で肌への効果などで優位性を求められることは多い。しかしながら、中身を少し変えただけで従来品の何倍もの美容効果を見出すことはできない。その際も他の新たな美容効果を見出すなどの対応で、顧客が納得できる形で資料を提供できるかどうかが問われてくる。

 また、感触や使用実感を評価するモニター試験では、見た目の容器パッケージや設定する価格帯などによって、中身の感触や肌への効果に関する評価が大きく変わってしまう。例えば、ベンチマークする製品との比較試験で、同じ容器を使って行うとモニターアンケートの結果がほとんど変わらないことは珍しくない。このようなことも含めて、どのような試験を行うかなど事前の打ち合わせがとても重要になってくる。

 田中 数字を使った差別化戦略は、今にはじまったことではない。紫外線防御効果を示すSPF戦争はその典型であり、また、アロエエキス配合化粧品を巡っては、エビデンスデータを持たない粗悪品が横行した時期もあった。当時ほどではないにせよ、数字を使った広告宣伝表現に対して、今後は消費者庁からのチェックが厳しくなるだろう。

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