コーセー、日やけ止めの塗布状態を見える化

粧業日報 2021年8月4日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 成分単位での塗布膜分析技術を開発
コーセー、日やけ止めの塗布状態を見える化
 コーセーは、浜松ホトニクスとの共同研究で、「貫通孔ポーラスアルミナ薄膜DIUTHAME」を用いたイメージング質量分析法により、肌上の日やけ止め塗布膜に含まれる成分を一括でマッピングする技術を開発した。

 この技術により、塗布膜に存在する紫外線吸収剤の偏りや、成分同士の位置関係、成分ごとの落ち方の違いなどを視覚的に解析することが可能になることから、顧客に価値をわかりやすく伝える評価技術の開発を進めていく。

 日やけ止めは、自然な仕上がりが求められる一方で、必要な成分がきちんと塗布されていないと期待される効果が得られないため、成分ごとの塗布状況がわかりやすい形で「見える化」できるこの手法は、日やけ止めの効果検証や処方開発において有用な技術となり得る。

 なお、この研究成果は、第46回日本香粧品学会(6月25・26日、東京)にて発表している。

 日やけ止めの機能性や使い心地を評価するためには、配合される各成分に注目し、肌上の日やけ止め塗布膜を微視的に「見る」ことが重要だが、日やけ止めには紫外線吸収剤やミネラルオイル、界面活性剤などの多様な成分が配合されており、それぞれ化学的性質も異なるため、従来技術ではこれらを一挙に可視化することができなかった。

 そこで今回、日やけ止め中の各成分が、肌上でどのように塗布膜を形成しているのか、それぞれどんな分布をしているのかを視覚的に評価する手法の開発を試みた。

 日やけ止め塗布膜を評価するときには、肌上での状態を保ったまま塗布膜を採取することが求められるが、従来手法には「処理が煩雑で塗布膜の状態が崩れてしまう」「肌成分まで採取されてしまう」など多くの問題があった。

 そこで同社は、これらを解決するために、肌上に乗せるだけで日やけ止め塗布膜のみを採取することが可能であり、複雑な処理を全く必要としない薄膜のツール「貫通孔ポーラスアルミナ薄膜DIUTHAME」に着目した。

 今回、この採取方法とイメージング質量分析技術を組み合わせることで、複数の成分の量や存在場所を一括評価することに成功した。

 これにより、例えば紫外線吸収剤の中でも油性成分と水性成分が異なる場所に分布することで塗布膜全体として効果的な紫外線防御を実現していることなどを確認することができる。



 この技術を用いて、使用シーンごとの塗布膜状態を観察すべく、まず試験用の日やけ止めを腕に塗布し、日差しの強い環境下にて活動後、塗布膜に含まれる紫外線吸収剤の状態変化を評価した。

 その結果、時間が経つにつれて特に水性の紫外線吸収剤が落ちていく様子が観察された。さらに、ランニングで汗をかいた後の塗布膜を同じように評価したところ、同様の傾向がより顕著に観察された。

 このことから、一口に「汗をかいて日やけ止めが落ちた」といっても、配合成分ごとに落ちるスピードや量には違いがある訳であり、この技術が汗で落ちづらい成分や製剤の設計をするうえで有効であることが示唆された。

 つまり、今回の技術により肌上の日やけ止め塗布膜における成分分布を視覚的に解析できるようになるため、塗布膜の紫外線吸収剤の分布に着目した処方設計や評価など、より高機能な日やけ止め開発を行うことが可能となる。

 また今後は、日やけ止め評価にとどまらず、ファンデーションや化粧下地の塗布膜評価や、有効成分の皮膚浸透性のビジュアル評価などへの展開も期待できる。
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