連載コラム

激変するコスメマーケット

2011.11.14

第4回 「エイジングケア商品の拡大に思う」

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

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 この秋、スキンケアからヘアケアまで、いわゆる「エイジングケア商品」が相次いで新発売されている。厚生労働省が化粧品広告において表現可能な効能として「乾燥による小ジワを目立たなくする」という項目を追加したことも、エイジングケア商品誕生を後押ししているのかもしれない。個人的には大歓迎! というところだ。

 それというのも、「肌も体もきわめて丈夫にできている」と自認していた若い時には微塵も感じなかったが、最近、健康食品のお世話になったり、気候の変化で肌トラブルに悩ませられたり、ということが頻繁に起こる年齢になり、エイジングケア商品に助けられることがとても多くなったからだ。困っているが即解決&即解消できる商品がなんと多くなったことか! この世代になったからこそ、ありがたみもひしひしと実感できる。

 そのような中で、当社も「エイジングケア関連商品」の企画や販売促進、広告制作の案件を依頼される機会が増え、様々な企業の方々と戦略会議をすることも多くなった。そこで気になることは、商品を供給する企業側からの会議参加者に、ターゲット世代の女性がきわめて少ないことである。

 ほとんどの企業で、女性経営者を除いて50代の女性たちと同席することはまずない。「エイジングケア商品」の開発ではあるが、現場は働き盛りの30~40代の女性たちと男性陣で推進しているような気がする。これでは、お客様たちの「老化の悩み」や「加齢についての皮膚感覚」を共有できるのだろうかと時々不安になってしまう。

 自分自身の経験に照らし合わせて考えてみても、30代の頃は、まだまだ自分が元気いっぱいで、様々な不具合が出てくることなど、そしてそれがいかに煩わしいかなど想像もできなかった。

 そのため50~60代になったら、「見かけも、心もどんなお婆さんになってしまうのか?」と考えていた。ところが自分がその世代に近づくと、精神的には「何も変化していない」。ただ少し「体が若いころとは異なる」だけなので、こうなると「いかに現在の若さを維持するか」ということが大切になってくる。この当事者感覚はなかなか若い世代には分からないと思う。
 「エイジングケア商品」の開発には、最先端の技術や有効成分が使われていることが多く、この分野の研究開発力は本当に素晴らしいと思う。

 また、各社ともターゲット世代のお客様調査やニーズ分析などは、びっくりするくらいの資料が揃っている。その昔「ほとんど思い入れだけ」でモノづくりをしていた時代を経験している世代としては「素晴らしい」と思う。

 そんな状況にも関わらず、商品のコミュニケーション戦略や販促企画、広告宣伝等を考える、いわゆる企業サイドに、ターゲット世代の実感を代弁する発言力を持った女性たちが少ないのは、たいへん寂しいことだ。

 だから、「加齢」という現実を遠慮がちに伝えて商品本来の効能をわかり難くしてしまったり、逆に「精神的な気持ちは何も変わっていない人々」を相手にしているのに、「老婆扱い」した表現をしてしまって嫌な気分にさせたりという、「間違いコミュニケーション」が起こってしまう。

 今後のエイジングケア商品の拡大を目指すなら、単なるモニター扱いではなく、何らかの形で50~60代の女性たちをご意見番として参加してもらうようなことも必要である。

 言い換えると、エイジングケアの必要な世代の女性たちから、商品開発だけではなくサービスやコミュニケーションなどあらゆる面について、いかに「本音」を引き出し、ビジネスの場面に取り入れていくかが不可欠になると思う。

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プロフィール

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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