連載コラム

激変するコスメマーケット

2012.06.21

第5回 「お手入れを売る!」

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

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 最近私は「紺屋の白袴」と言えるような大失敗をした。ある得意先の通販化粧品の「お試しセット」をモニターとして使用することになったのだが、商品の使用手順と使用方法の解説書を読まずに、ごく一般的な使用方法で、まるまる一週間使い続けてしまったのだ。

 その結果「評判ほどすごい商品ではないなあ」と思ってしまったのだが、後になって、その商品ならではの使用手順と使用方法が提案されていることに気がついた。

 あらためてそのメーカーが推奨する方法をきちんと試してみたところ、「なるほど、納得」の商品であることを実感した。

 私の場合は、自らの失敗が原因で「いかに化粧品は使用方法が大切であるか」ということを今更ながら実感したのだが、最近の化粧品の販売現場では「使い方(使用手順、使用方法、使用量)」の説明がやや不足しているのではないかと思う。

 私は、化粧品は単なる工業生産品ではないと思っている。化粧水もクリームも、オールインワンもメイクアイテムさえも、そのままではまだ"半完成品"。

 使った人の肌や心に「キレイになった」というプラスの変化をもたらすこと、使った人に「ああよかった」と実感してもらえることで、初めて化粧品は "完成品"となる。

 私もいつも実感していることだが、人間の肌を相手にする化粧品は、その使用方法ひとつで実感・効果感に歴然とした差が出てしまう。

 したがって、その化粧品の持つ力を最大限に引き出し、肌を良い状態に保つためには、お客様に毎日「正しい方法」で使い続けてもらうことが大切なのだ。

 言い換えると、お手入れの手順や製品の使用方法、使用量、使用するタイミングなど、細かな使い方をしっかりと理解し、実践してもらうことが不可欠なのだと思う。

 ところが残念なことに、最近の化粧品の販売方法は "完成への手順"とも言える使用方法があまり多く語られていない。

 もちろん、お客様に注目してもらうためには、話題の成分やキャンペーン情報はとても重要だ。

 しかし「半完成品」である化粧品は、製品が売れただけで試合終了ではない。製品がお客様の手元に届いた後、"使っていただく"という第二ラウンドが始まるのだ。

 それなのに、せっかくの化粧品を「活かす」情報が、お客様の目にとまらないのはとても残念だ。製品特長の訴求と使用方法の解説は、化粧品販売のいわば両輪である。

 どの会社も、開発段階では成分の配合と同時に使用方法もトコトン突き詰めて製品化にこぎ着けているはずであるが、いざ売る段階になると、配合成分やキャンペーンなど売り手の都合が優先した話題をついつい訴求してしまい、地道ながら重要な情報である使用方法がすっかり陰に隠れてしまう。

 これでは"完成品"として成功するための要素の半分を、自ら捨ててしまっているようなものだと思う。

 どんなにすばらしい化粧品も、正しく使われなければ効果が削がれ、その結果、不当な過小評価をされてしまう。

 そして、一度お客様から「効果なし」と判定されてしまうと、たとえ使い方が間違っていたとしても、同じお客様からの信用は永遠に失われるといってもオーバーではない。正しい使い方のアピールは、その製品の命運を左右するほど重要なことだと思う。

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プロフィール

執筆者:鯉渕登志子 (株)フォー・レディー代表取締役

1982年㈱フォー・レディーを設立。大手メーカーの業態開発や通販MD企画のほか販促物制作などを手がける。これまでかかわった企業は50社余。女性ターゲットに徹する強いポリシーで、コンセプトづくりから具体的なクリエイティブ作業を行っている。特に通販ではブランディングをあわせて表現する手腕に定評がある。日本通信販売協会など講演実績多数。

http://www.forlady.co.jp/

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