【週刊粧業2023年1月30日4面にて掲載】
中国のスキンケア市場は成長とともに進化を続けている。そうした市場で企業は何が必要なのか。どういったマーケティングを行うべきなのか。そのヒントを、2022年の中国スキンケア市場において、ビッグネームの影で着実に成長してきた中国ブランドを分析するところから見ていきたい。
先のW11において、コスメ領域で中国ブランドが引き続き存在感を見せている。
スキンケア市場においては敏感肌市場を押さえた「WINONA」、618で急躍進したアンチエイジング化粧品の「PROYA」がトップ10入りを果たし、徐々にランキングを上げている。
さらに、ランキング外でも注目の中国国産スキンケアブランドが伸長を見せている。それが「QUADHA(中国名=夸迪)」である。
同ブランドは2014年に誕生したスキンケアブランドで、主にヒアルロン酸を成分とした機能性スキンケアとして展開している。
特徴的なのが主力商品だ。化粧水や乳液といったボトルタイプのスキンケアではなく、1回使い切りタイプの小さな容器が30本ワンセットなどで販売されている。もちろん、商品のラインナップには「肌のハリ」や「ニキビ予防」といった、目的別の機能を備えた商品が開発されており、消費者は自身の肌状態に合わせて商品を選ぶことができる。
NOVARCA(旧トレンドExpress)では、「QUADHA」の直近12カ月間のウェイボークチコミ簡易分析を行った。
月次件数の平均数では4200件程度、12カ月間で約5万件のクチコミが投稿されているが、注目すべきはその伸び方である。
まず21年11月、ダブルイレブン(W11)に波を迎える(3968件)。その後は2000件前後で推移し、年明け最初の商戦ともいえる3.8婦人節時期にあたる22年3月に微増(2327件)。そして、618を間近に控えた5月、さらにその数を伸ばした(4085件)。その後、いったん落ち着きを見せるが、8月に急速な増加(8523件)を見せた。
急増の要因と考えられるのは、8月の中国式バレンタインデーと呼ばれる「七夕」に、30代女性の恋愛を描いたブランディング動画を公開している点である。この動画に合わせ、同社もSNSマーケティングなどを展開した。結果としてターゲットである肌の状態を気にする30代前後の女性に刺さったことが、クチコミの増加やブランディングに寄与したと考えられる。
そして10月にはW11直前に、李佳琦によるW11へのオファー番組「所有女性的OFFER」でも取り上げられ、李佳琦のライブにも紹介されたこと、またその実績をSNS上で効果的に発信していたことで大きな伸び(9360件)を示している。
また、キーワード上位には「ヒアルロン酸」がきている。
同社はヒアルロン酸専門の研究企業であり、重要なキーワードが浸透していることが見て取れる。
その次にくるのが中国語で「戦痘」、日本語で「ニキビと戦う」というキーワードである。「ニキビ」は中国において乾燥肌や敏感肌と同レベルで悩みを抱えている消費者が多い。そのニーズを的確に捉えていると言える。
ところで、中国で伸びている「WINONA」と「QUADHA」。社名をみると前者は「雲南貝泰妮生物科技集団」、後者は「華熙生物科技」であり、双方ともに運営企業はバイオケミカル系の研究会社であることがわかる。
現在の中国の消費者は「成分党」など、商品をより客観的に、科学的に分析し、消費行動につなげる傾向が強い。外資系か中国系かという点よりも、そのブランドや企業が有する「専門性」に重きを置くのである。
今後は日本の大手企業の数ある機能性化粧品も、中国市場においてシェアを得るためには、会社単位での専門性ブランディングがより重要となるだろう。