【週刊粧業2023年10月23日号10面にて掲載】
陸だけでなく、海の生物ももちろん多様性に富む必要がある。地球の約70%が海ということもあり、生物の70%が海洋生物といわれている。化粧品産業にかかわる海洋原料といえば、海藻やサメを思い浮かべるだろう。サメのヒレなどは、食など様々な原料に使われるが、化粧品ではスクワランがある。サメは多数の種類があり、絶滅危惧種に指定されているものも多い。これらはワシントン条約で規制されており、前回のアロエフェロクスについても同様である。
ある専門調査によれば、ある特定の製品(化粧品やペットフードなど)をDNA分析すると、絶滅危惧種に指定されているサメ由来原料が使用されていたことがわかっている。本来は捕獲や産業使用が禁止されているにもかかわらず、前回のアロエフェロクスも含め検疫などで摘発されることが多いという。ワシントン条約は、3年に1回協議され、ちょうど昨年の12月にCoP19が開催されている。このように、絶滅危惧種保全のために何を守らなければいけないかを把握し、情報も都度更新することが大事である。
現在までに大きな問題になっている海洋プラスチック問題。実はこれも、海の生物多様性に大きく関係している。一般的な理解として、プラスチックが海などに流出すると、長い年月をかけて細かくなり、ずっと海中を漂っているため、魚や海洋生物が誤って食べてしまうというものが多いだろう。いわゆるマイクロプラスチックのことであるが、よくいわれるレジ袋やプラスチック製ストローだけではなく、コロナ時は不織布マスクなどの衛生製品までも海に浮遊していた。もちろん、化粧品ボトルも多数海に流出している。
ほかのプラスチック製品と同様、化粧品でもお馴染みのプラスチック製容器や包装も流出を防ぎ、リサイクルなどされるべきであるが、化粧品の場合は、成分中にプラスチック原料が配合されている場合がある。当然ながら、全成分表示にもそれがプラスチック原料であるかどうか専門部署でないと確認できないことが多く、消費者にも混乱を招く。
プラスチック原料について今一度確認し、製品に必要な場合はプラスチック原料が内容量に含まれていることをしっかり消費者に伝え、適切な廃棄方法も提案する必要がある。プラスチックは産業革命下では非常に画期的で、化粧品製品としてもとても馴染みがあるが、魚などがマイクロプラスチックを食すことで、生態系が崩れ、生物多様性のバランスを壊している。生物多様性において、やはりプラスチック問題は早期解決が求められる。
今年5月22日の「生物多様性の日」を皮切りに、生物多様性に関する新しい枠組みが制定され、その後の6月8日「世界海洋デー」でも、プラスチック汚染の問題が改めてとりざたされた。「Beat Plastic Pollution」として、国連が改めてプラスチック汚染撲滅を訴え、2024年までに具体的な枠組みを示すとしている。化粧品業界では、プラスチックとどう付き合っていくか、まだまだ課題が残る。