2010年で創立85年を迎える学校法人メイ・ウシヤマ学園は、世界初のビューティビジネス専門職大学院として、2008年にハリウッド大学院大学(東京)を開学し、今年3月第1期卒業生を輩出した。
日本の美容技術は世界最高基準と評される一方で、美容師は社会的、経済的に十分評価されていないのが現状だ。同校は「この点を何とか改善しないと業界自体の発展がなくなる」と危惧し、美容師の優れた技術を、給与や施術価格などに反映させるために美容業界の「創業者」「後継者」「再生者」といった経営者側の教育を推し進め、健全に成長できるサロン経営を浸透させることを目標に掲げる。
同校の取り組みと方針について、理事長及び学長の山中祥弘(よしひろ)氏に話を聞いた。
美容師の意識改革で化粧品業界とも連携を提案
――ハリウッド大学院が進める経営者教育の特徴は。
山中氏 当校の特徴をあらわす科目として、経営者が技術者をきちんと評価するための「技術者評価」の授業がある。経営者が「適性」のある人物を採用し、能力を開発する「教育」を行い、その能力を発揮できる「配置」をすることで、初めて技術者が正しく評価される環境が整えられる。この授業は同時に、社員のキャリアとモチベーションのアップに繋がる科目として提案している。
――健全な経営について具体策は。
山中氏 我々が考える健全なサロン経営に必要なものの1つとして、店販化粧品販売を推奨している。現在は化粧品業界と美容業界がそれぞれ別の産業と捉えられているが、もともとブランド化粧品はサロンから生まれたものなので本来は一体だ。欧米の美容室ではスキンケアやメークアップまで行うトータルビューティーサロンが主流で、使用している化粧品が店販品としてごく普通に販売されている。日本では美容師があまり化粧品の説明をしないので、店販品の占める割合はサロン売上の5%に満たない。お客へのサービスだけでなく、美容業界の発展のためにも、経営者は店販品について積極的に推奨するべきではないか。
――では、どうすれば美容室で推奨販売ができるのか。
山中氏 「ビューティケア」はサロンケアとホームケア両方を指すが、日本ではサロンケア偏重で、業界全体の風潮としてホームケアを軽視する傾向がある。その原因は、美容師がホームケアのアドバイスに関心が低いからだ。本来、美容師が優れた技術と感性で完成させたスタイルを、ホームケアで持続できる方法を説明することがプロの役目であり、サロンの役目である。説明を求められたら、「自分のサロンがどんな化粧品を使っているか、どうすればスタイルの美しさを長く保てるか」を説明すれば良い。美容の専門家である美容師には、自信を持って使用している化粧品を推奨してもらいたい。
――店販品は高価格で生活者には敬遠されるのでは。
山中氏 値引き競争をしている現在の化粧品市場は、いつか行き詰まる。基盤の堅い化粧品市場を作らねば、発展そのものがなくなるのではと懸念している。美容と化粧品の双方の発展のためにも、美容師の知識やノウハウを化粧品の顧客に付加価値として提供していけば値引はなくなる。
業界の発展のために経営者を変える教育に注力
――卒業生に関しての手ごたえを実感しているか。
山中氏 美容関係のサロンとディーラーの後継経営者はしっかり育てることができた。また、卒業後、ネイルサロンを開業した者もいる。次は化粧品メーカーの後継者、経営者、幹部候補生の育成も強化する。
――現在検討中の施策について伺いたい。
山中氏 当校の特徴である「技術者の評価」だけでなく、技術者を教育するトレーナーを養成することに挑戦して、マネージメントメント面とテクノロジー面それぞれの指導者を生み出したいと考えている。また、在学時に現場に行ってスタッフとして働き、経営にも参加してみるという経験が必要だと思うので、産学協同型のインターンシップも実施していきたい。
――今後の課題は。
山中氏 経営者が変わらなければ業界は変わらない。技術力に経営力がともなうサロンでなければならない。そのために、専門学校ではエステ、メイク、ネイル等の授業において、化粧品に対する理解の深い美容師の教育を進め、さらに大学院ではその技術者の能力を正しく評価できる経営者を育成するとともに、化粧品業界のリーダーになりうる優秀な学生を少数精鋭で育てる授業を並行して行っていく。
現在、美容業界と化粧品業界の研究をしながら、今後どのような教育や研究が必要か、研究成果を教育にどうフィードバックするべきかを検討していくために、産学協同のビューティビジネス学会を立ち上げている。
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この記事は週刊粧業 掲載
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